イエロー・サブマリン

表題作を含む、小説2作品が収録されています。どちらも『父と子』が隠れテーマといえます。
- 『イエロー・サブマリン』
- 山際さんの唯一の野球長編小説です。
1980年代後半から90年代初め。一人の無名のアンダーハンド投手(サブマリン)がメジャーリーグを夢見て単身渡米します。
何のツテもなかった彼はその夢に挑む方法すらわからないまま、近所の草ソフトボールの試合に借り出されます。そこで出会った
元メジャーリーガーの指南を受け、夏のアラスカのマイナーリーグに挑戦します。そこで彼は徐々に力をつけて、少しずつ格上のリーグに
スカウトされていくようになります。そして各地でのいろいろな人との出会いによって人間としても大人になっていくのです。
マイナーリーグの経済事情や、バスでの移動、普段の選手の生活模様などの描写がとても細かくかかれてます。よほど丹念な取材を
されたのだなぁと感心してしまいます。
この物語のもう一つのストーリーとして、彼の父親が中心となって進められていく日本企業によるメジャー球団の買収計画があります。
今まさに空前の好景気から少しずつ不況への道を進み始めている頃、それでもまだ日本企業のアメリカ進出の意欲は衰えず計画は進行
していきますが、景気は想像以上の速さで陰りを見せていきます。
物語のクライマックスは、買収をあきらめざるを得なくなった父親と、その買収予定だったメジャー球団への入団を自らの力で
勝ち取った息子のコントラストを描いて幕を閉じます。
無名選手のメジャー入り。少し出来過ぎの結末ですが、これには山際さんの夢、願望が含まれているのでしょう。
また物語り全体に、山際さんの野球観、スポーツ観、アメリカ観、そして親子観がにじみ出ているような気がします。
- 『僕が鯨になった日』
- 海が大好きな少年がスキューバーダイビングを体験する物語です。
山際さんのご子息のために書かれた作品だそうです。