ニューヨークは笑わない


主にニューヨークへの取材旅行中の出来事に、そのとき話題になっているスポーツを取り巻く話題に引っ掛けて書かれています。 山際流旅行記といったところでしょうか。

『青山通りの追い越し車線』
山際さんがアメリカで借りた、走行中に突如エンストするレンタカーにまつわるエピソード。前書き。 ほとんど故障らしい故障をすることのなくなった日本車に比べ、故障しやすいアメ車の方が人間的でいいじゃないか、 というようなこと。

『ロウ、ロウ、ロウ、ユア・ボート』
『エンパイアステートビルの最上階の蟻』、『後楽園球場の大鼠』そして『マンハッタンでカヌーに乗る人間』。 なぜか不釣合いな場所に棲息している生物にまつわるエピソードです。周りは『何でこんなところに来てしまったんだ?』 と思っているのに、当の本人は『実はココの本当の主は自分だ』と思っている。そんな気にさせられます。
不思議に都会的でおしゃれな臭いがプンプンする作品です。

『旅の途中』
ニューヨークで『江川引退』の報道に接したことから想起した、日本野球とアメリカメジャーリーグとの距離について。 山際さんは、クラウンライターのドラフト指名を拒否して南カリフォルニア大学へ留学していた江川に、メジャーリーグ挑戦を期待 していたそうです。もし実現していたら・・・、夢のような話であることはもちろんですが、その後の日本野球界を想像すると なにか空恐ろしい気がしてしまいますね。

『ニューヨークは笑わない』
バブル真っ只中。天井知らずの勢いで高騰を続ける日米の地価と野球選手の年俸について。
ちょうど日本では年俸一億円をめぐる攻防が繰り広げられている頃で、メジャーでは300万ドルに手が届くところまで年俸は 高騰していたのでした。
それから数年後には日本も年俸3億円あたりまでは一気に上がりましたが、その後の上昇はそれほどでもありません。経済不況の影響は もちろんでしょうが、トップクラスの選手のメジャー流出が一番の原因といえるでしょう。
一方のメジャーリーグはその後ストライキを経て、ついに年俸は2000万ドル、はたまた3000万ドルという次元にまで上り詰め、 球団の経営破たんにまで達してしまいました。これが本当に『子供たちに夢を与える』ということなのでしょうか?


『永久歯のない町』
ニューヨークへの旅の間に地上げで取り壊されてしまった近所の合鍵店について。前章のあとがきみたいなものでしょうか?

『穴のあいたウォーターベッド』
メジャーリーグを目指す大学野球選手について。
山際さんがたまたま出会ったある大学チームの4番打者は、学生結婚を したものの、一年で離婚してしまっていました。彼はチームメイトから『ドラフトされるならあいつぐらい』といわれる素材でしたが、 その後ドラフトされたかどうかは不明です。
同じ頃、同じように学生結婚をした大学生がドラフトされ、新人王を獲るほどの活躍をしました。若き日のマーク・デヴィッド・マグワイア です。彼は50本塁打が懸かった最終戦を妻の出産のために休場したことでも有名になりました。
しかし、まさか十年後、彼が70本塁打を記録し、全米の話題を席巻するとは山際さんでも思いもしなかったことでしょう。 もっとも、彼も離婚してしまっていましたが・・・。

『インタビュー』
巨人の監督を解任されてから4ヵ月後に訪れた王貞治・元監督とのインタビューの様子。インタビューそのものは別の媒体に掲載 されたのではないでしょうか。ここでは主題を『何故彼がこの時期にインタビューを受ける気になったのか』に置いて書かれています。
彼は解任後、野球の話をすることを拒み続けていました。しかしなぜか山際さんからの取材要請を受けてしまったのです。
なぜインタビューを受ける気になったのか、できれば受けて欲しくなかった。山際さんの文章にはそういったニュアンスが感じられます。 聞きたくない話を聞かなければならないから、ということでしょうか。

『チャンピオンの故郷』
マイク・タイソンに会って話をするためニューヨークに来た山際さんは、空いた時間にタイソンが育った街・ブルックリンを訪れました。 昔の仲間たちにタイソンについての話を聞くためです。彼らから聞いた話は他愛もない話でしたが、誰もその当時のタイソンの写真を 持っていないことを知らされます。写真が出回ることを恐れたタイソンの関係者が一枚1000ドルで買い集めたということでした。

『フォアマンズ・ナイト』
前章でのタイソンの取材と同じ頃、10年のブランクを経て復帰を果たし、ヘビー級で連勝を続けるジョージ・フォアマンについて。 フォアマンは、『世紀の一戦』といわれたタイソン対マイケル・スピンクス戦の前日に、同じアトランティック・シティーでリングに 上がりました。チケット代はタイソン戦の百分の一でした。
フォアマンはその直前、様々なトラブルを抱えていたタイソンに対して、タブロイド紙にコメントを寄せていました。 タイソンの周りに群がる人間は、全て金目当てなのだから、気をつけろと。
そして彼自身、その金のためにリングに帰って来たのでした。なお、山際さんはその後、勝ちつづけるフォアマンに会って話をする機会 を得ています。その様子は、『スタジアムで会おう』に『「神」になったボクサーとの対話』に描かれています。

『ガヴィアの溜め息』
ビーチバレーの取材で訪れたブラジルで体験したサッカー場の喧騒について。
ビールを買い込んでホテルに帰る途中、山際さんはどこからか聞こえてくるどよめきに気付きます。そしてその正体は、プロの試合が 行われていた付近のサッカー場の観客の溜め息だったのです。
やっと手に入れたサッカーのチケットを自慢げに見せびらかす少年の表情が目に浮かぶようです。

『ファイナル・ゲーム』
ニューヨークでの短期滞在を終え、東京へ戻るまでの出来事。あとがき。
山際さんはニューヨークからの帰国便でたまたま手にした新聞に、自らの文章が英訳されたものが載っているのを知らずに三分の一ほど 読み進めたことがあるそうです。とても気恥ずかしかったようです。

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