バットマンに栄冠を


表題作を含む、スポーツノンフィクション4作品が収録されています。

『ロウイング、ロウイング』
『スローカーブをもう一球』に収録されている『たった一人のオリンピック』の続編的作品です。
その主人公・津田は、「オリンピックに出る」という突然の思いつきのためにたった一人で努力し、本当にオリンピック代表の座 を射止めてしまいます。
彼について掲載された雑誌の記事を読み感銘を受けた高校生の足立は、大学入学とともに津田の下で練習を重ね、津田と同じように オリンピックを目指しました。
一見同じ道を歩んでいるように見えますが、二人の間には微妙な温度差がありました。そのスタートラインから一人で考え努力してきた 津田にとって、後からくる足立には自分の考えで判断し練習するといった面に物足りなさを感じてしまうのです。

『バットマンに栄冠をー衣笠祥雄最後のシーズン』
タイトルのとおり、広島カープ衣笠祥雄の現役最後のシーズンの前半、連続試合出場記録の世界記録(当時)を塗り替えるまでを 描いた作品です。
といっても、単に記録を達成するまでの苦労話に終わらないところが山際作品らしいところです。
読み終えた後印象に残るのは、偉大な記録を達成した衣笠の野球人としての偉大さではなく、むしろ、やわらかい語り口調、柔軟な発想、 機知に飛んだ受け答えといった一人の人間としての衣笠の素晴らしさです。

『「すまん!」』
1983年39歳の若さで亡くなった猫田勝敏は、60年代から70年代にかけてまだ世界をリードしていた頃の 全日本バレーボールチームで中心選手として活躍した名セッターでした。
猫田のプレーは、相手の動きを冷静に判断し味方選手の癖や特徴を全て頭に入れて正確なトスを上げ、自らは決して目立つことなく 裏方に徹するというものでした。
80年代には入り、選手の大型化が進み世界のバレーボールがパワーと高さの時代になると、セッターにもよりスピーディーなトス廻しが 要求されるようになり、セッターのプレーは基本に忠実で正確でなければならないとする猫田の考え方は時代遅れになって いくのです。


『鳥人伝説』
「人はどれぐらい遠くまで飛ぶことができるのか」
というスキージャンプ競技の歴史を、大倉山シャンツェの最長不倒距離の変遷をもとに語っています。
その歴史は、より飛距離を伸ばすために日々トレーニングを続ける選手と彼らを育て上げるコーチ、そして毎年のように技術革新を続ける 用具メーカーの努力の歴史と言い換えることができるのです。

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