第5回


                     5


 記録によれば、入植者たちのほぼ半分は遺蹟の調査に携わり、あとの半分がリチウム採掘に携わっていた。その双方が、ほぼ同時に発病している。ウイルスかバクテリアなら、潜伏期間を考慮して、入植者たちの詳細な行動記録を検討し感染経路を割り出す必要があるが、残念なことにそこまでの記録はなかった。原因を未知の放射線にもとめるにしても、彼らの行動はじつにまちまちで、地下深く潜ったままの者もいれば惑星表面の施設からほとんどでたことのない者もいるといった状態なので、全員がほぼ同時におなじ条件下でその放射線を受けたと思われる時期を特定するのは困難だ。レナード・マッコイは頭をかかえた。頼れるのは臨床のみだ。
 そして、彼自身の医者としての経験。
 定時連絡の時間になり、彼はコミュニケーターのスイッチを入れた。
「マッコイからエンタープライズへ」
「エンタープライズです」ミスター・スポックがこたえた。「ドクター、そちらの様子はいかがですか?」
「まだなにも。少なくとも、四人ともまだ生きているよ」
「なにかわかりましたか?」
「おいおい、まだほとんど患者を診ていないんだ。いくらわたしでもこんなにはやくは無理だよ」
「ご健闘を祈ります。ところでドクター、カーク船長とも話しあったんですが、本来のスケジュールに対する遅延の許容時間を考えると、この星系にはぎりぎり八日間しか滞在できません。そのあいだに解決できなければ、医療専門の使節の派遣を要請しなければなりません」
「八日間か。きみの論理だったらうまく解決できるかもしらんがね、あいにくなことにわたしも人間だ。解決どころか、ミイラ取りがミイラになる危険だってある――どうだ、きみもこっちへ降りてきて、手伝ってくれんか。どうもこの疫病はつかみどころがなくてね、およそ非論理的なやつだ。コチコチの論理のかたまりのきみなら、よもや感染することもあるまい」
「船長命令とあれば。しかし、この機会にコンピュータの総チェックをおこないたいので、それは無理ですね」
 マッコイは舌打ちをした。毎度のことながら、皮肉がまったく通じていない。
「ほかに報告なさることがなければ、通信を切りますが」
「そうしてくれ。病気にやられる前に、ノイローゼになりそうだ」
 マッコイはコミュニケータをしまった。
 八日間か――マッコイはベッドに仰向けになり、居室の天井をにらんだ。できれば、この手で解決してやりたいもんだ。船のやつら、カーク以下全員が、そんなに短期間で彼ひとりに解決できるとは思っていないにちがいない。いまさらいいところを見せようとか、見返してやろうとかいった気持はなかったが、意地がないわけでもなかった。




 
奇蹟(ミラクル)のM


弾射音
連載小説
(C) 2002 Dan Shannon. All rights reserved



2002/5/25

Ads by TOK2