鉄道員
IL FERROVIERE

1956年イタリア映画
 白黒 115分
 
監督 ピエトロ・ジェルミ
出演 ピエトロ・ジェルミ ルイザ・デラ・ノーチェ
 エドアルド・ネボラ シルヴァ・コシナ
   サロ・ウルツィ
おすすめ映画
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2005/7/18

50歳を迎えた鉄道の機関士アンドレアは、酒が大好きな堅物の中年男性。自らの仕事には大きなプライドを持ち、家族の中でも主君として君臨する。妻のサーラは、あくまでも優しく献身的に仕える女性。しかし、そんな厳格な父親に長女のジュリアと長男のマルチェロは心を開けない。ただ一人、末っ子の幼いサンドリノだけは父親を英雄視して慕っていた。結婚した長女の問題、悪い取引に手を出す長男、家庭の悩みが尽きない中、アンドレアは鉄道を運転中に身投げした青年をはねてしまう・・・。


第2次大戦後のイタリア映画は、戦争の爪痕と復興の厳しさを語るネオリアリズムに代表されますが、それも一段落ついて市民の暮らしが日常を取り戻しつつある頃の一庶民を語らせれば右に出る者がいなかったのがこのピエトロ・ジェルミだと思います。この映画は、そんなピエトロ・ジェルミの「刑事」と並ぶ代表作。若い頃から鉄道機関士として活躍してきたアンドレアは、酒が好きだけれどそれ以上に仕事に熱い熱いプライドを持っている人です。バリバリの熱血漢は、しかしながら家庭でも時には暴君となってしまいます。ひたすら、一歩引いて家族を見守る妻。反発する長女と長男。まだ幼い末息子だけが、父親をヒーローと慕っています。ほとんど父親の強制で結婚した娘のジュリアは、やがて結婚に息詰まり、息子のマルチェロはやや不安定な生活。思い通りにいかない家族にイライラしながらも仕事に燃えるアンドレアを襲った一つの事故は、彼のプライドを引き裂きます。しかし、それでも・・・。

こんなお父さんがいるとさぞ大変だろうと思われる父。根っこは家族への愛情に満ちているのに、それが巧く表現出来なくてどんどん溝を深くしてしまう頑固者。そんな夫に恐らく時には反発する気持ちもあるだろうに、一生懸命家族の緩和剤になろうとする母。まだ事態が良くわからない幼い末息子の視点から描かれているだけに、特にどちらの側につくわけでもなく、姉や兄の反発にも特に加担するでもなく、淡々と話は流れていきます。

自分の信じる道をひたすら突き進むアンドレアのやり方は時に仕事にも表れるのですが、そんな彼を温かく迎えてくれる仕事仲間。極め付きはクリスマスパーティで、どこからこんなに人が集まってきて、一体どこに入るの?というくらい、アンドレアの家は人で溢れます。食べて歌って、いつも側に食べ物と音楽があるところが、どこか根っこが陽気なイタリア人らしくて、ちょっと幸せな気持ちになってしまいます。生活の辛さも、心の行き違いの哀しさも、音楽が聞こえて来たらその瞬間には忘却の彼方に飛んでいってしまうのですよね。

戦争をくぐり抜け、一人の職業人として、一人の夫として、一人の父親として、何よりも一人の男として人生を駆け抜けた頑固者の物語。今から思えば50歳にして初老はないでしょう!?と思うんだけれど、ピエトロ・ジェルミは確かにそのようにも見えます。顔に刻まれた皺、多分白髪交じりの髪。ピエトロ・ジェルミって、何年も倉に寝かせたビンテージ物のワインと言える味わいだと思っています。

そして、この映画の最高の点の一つはあの音楽でしょう。鉄道のボゥーッとなる汽笛にかぶさって聞こえてくるあの物悲しいメロディ。一つの音楽に一人の人生を託すことの出来た希有な例と言っても過言ではないくらいの名スコアです。思い出すだけで思わず涙がこぼれるメロディです。


☆外見はそうでもないんだけれど、この家は結構室内の広さとか内装とか立派ですよね?


ビデオ ○   DVD ○


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