砂の器


1974年日本 松竹
カラー  143分

監督 野村芳太郎
出演 丹波哲郎 加藤剛 緒形拳 森田健作
島田陽子 山口果林 加藤嘉 
佐分利信 笠智衆
おすすめ映画
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2004/1/25

東京、蒲田周辺である男性が殺害されているのが発見された。それを捜査することになったベテラン刑事の今西と若手刑事の吉村は、近くのトリスバーで聞き込みをした結果被害者と見られる男性が連れの男性と何か話し合っていてその中に「カメダ」という言葉が含まれていたことを知る。この手がかりを軸に二人は捜査を進めていく・・・。


テレビドラマ化されて再び脚光を浴びている「砂の器」。原作は松本清張です。74年製作のこの映画は、この原作を少々変えてはいますが、何でも松本清張自身が映画の方が良いと言ったとか。皆それぞれの立場から色々な意見があることとは思いますが、この時代恐らくはまだまだ知られていなかったある事情を世間に知らしめたという役割をこの映画を担ったことは否めないのではないでしょうか。

この映画はサスペンスですが、いわゆる犯人探しに重点を置いた映画ではありません。ちょっと見慣れている人なら、予備知識がなくても見てすぐに作中の人物関係がわかってしまうのではないでしょうか。ですからこの文の中でもやや中身に触れますがご了承下さいませ。

この映画のテーマは「宿命」だと言われています。天才音楽家の和賀英良が作曲して演奏する交響曲「宿命」はわざわざこの映画のために作られた曲と聞きます。クライマックスで演奏シーンが続きます。そして知っている方は知っているあのシーン。話したくてうずうず・・・。雪の降り積もった寒い地方の季節の移り変わり。雪の白から季節がめぐって桜のピンクの季節へ。この映像の美しさは秀逸です。そしてそこを歩く加藤嘉の姿を見ているともうとめどもなく涙が出て止まらなくなります。このシーンだけでもうこの映画はズバリ加藤嘉の映画!震える手、涙、叫び、でもそのほとんどは無言の歩み。「砂の器」と聞くだけで加藤嘉が浮かび、このシーンが浮かび、涙がボロボロ出る・・・もうどうにもならないパブロフの犬状態に陥ってしまうのです。また、子役の春日和秀君が何とも言えずうまいんですね。きっとした目でにらむところなど。何でもテレビドラマ「あばれはっちゃく」に出ていた子だそうで、そういえばそんなドラマがあったなあ、とどこか遠い目になってしまうのでした。

テーマがテーマだけに、見終わってからどーんと考え込んでしまいます。人はどうして人を差別しようとしてしまうのでしょう。時代が時代だった。福祉制度が整っていなかった。無知だった。様々な理由があるものの、でも今でもれっきとしてその差別が残っている現状を見るにつけ、人生をすっかり狂わされた人のことを考えると語るべき言葉を失ってしまうのです。その立場の方が見たとするとこの映画がどう映るのかはわかりません。ただ、そうでない人々には、こういうことがあった、いや今でもあるのだということを知る機会になると、そして考えて欲しいと思わずにはいられません。

キャストも豪華です。いや何と言ってもこの映画のナンバーワンは加藤嘉と信じて疑いませんが、同じ加藤の剛さんはとにかく格好良い。ハンサム絶頂期でしょうか?孤高の天才という役柄がその美しさにマッチしております。情に厚い緒形拳も良かったし、その妻役の今井和子の語らずとも目で演技していた様子や楽しそうにご飯をよそう姿がまた印象に残っています。事件を追う刑事コンビの丹波哲郎と森田健作。いやはっきり言って面白コンビです。ベテランと若手という組み合わせは定石ではありますが、何かとっても微笑ましい。クライマックスで丹波哲郎が自分で語って自分で泣くシーンがありますが、どうもこれは感極まって本当に泣いてしまったらしいです。そして相変わらず熱血青春刑事の森田健作の存在はあまりに重いこの映画の一服の清涼剤(?)かもしれないという気になってしまいました。もう「おれは男だ!」のあのテンションの高さそのまま(笑)。「吉川君!」って言い出すんじゃないかと思ってしまうようなセリフ回し。海辺で佇んでいる様を見てしまった時には、海辺を走り出すんじゃないか(♪さよならは誰に言う〜とBGMがかかる)とか、海に向かって「馬鹿野郎〜!」と叫ぶんじゃないかとか、思わず期待してしまうのでした(爆)。彼の存在がなかったら、この映画はもしかしてあまりにやるせなくなってしまったかもしれません。

あまりネタバレするわけにもいかず、かなり舌足らずなことしか書けませんでした。詳しくは映画をご覧下さい、としか今は言えません。良くも悪くも考えることは沢山あるはず。白装束やお遍路さんや桜を見るとそれ以降しばらくは涙ぐむことになるやもしれません。ティッシュは必ず近くに置いておきましょう。


☆子供の頃から、おじいさん俳優の代名詞と言えば、加藤嘉と笠智衆でした。この映画は二人が共演しているのですね。感無量です。

も一つ☆トリスバーって、昔の○ントリーの「トリス」を出すバーってこと??



(ババ談)高校生のとき、偶然、映画館で何の予備知識もなしにこの映画を見てしまったのですが、最後の30分ほどは涙の流しっぱなし、涙腺が壊れたみたいに泣きっぱなしでした。その後、学校の体育館でも上映されたのですが、やっぱり滝のような涙。今回、20数年ぶりに観たら、肝心のシーンの数分前から既に涙が。もちろん、高校生のころは社会的問題なんかにはほとんど理解がなく、ただただ親子の姿に涙したのですが、それでも、決してボクが幼稚だったから泣いたのではないと思っています。「お涙頂戴」と言ってしまえばそうかもしれませんが、「お涙頂戴」と批判的なことしか言えない人も悲しい人なんじゃないかと思ってしまう。今回のドラマ版しか知らない人にも、ぜひとも観ていただきたい歴史的名作です。しかし、森田健作の登場シーンでは、当時でも劇場内に若い女性たちからくすくす笑いが漏れていた・・・


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