ミニヴァー夫人

MRS. MINIVER

1942年アメリカ映画 MGM
  白黒 134分

監督 ウィリアム・ワイラー
出演 グリア・ガースン ウォルター・ピジョン
    テレサ・ライト デイム・メイ・ウィッティ
     レジナルド・オーウェン ヘンリー・トラヴァース
  リチャード・ネイ ヘンリー・ウィルコクソン
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2004/4/11

第2次世界大戦が目の前に迫るイギリスの小さな街。中流階級の美しいミニヴァー夫人は、街で素敵な帽子を見かけて迷った挙げ句買ってしまう。対するミニヴァー氏は、車を・・・。思えば戦争前の平和なひとときだった。オックスフォードに行っている長男のヴィンが帰省して家族揃っての楽しい毎日。しかし、ついに戦争が始まり人々の暮らしはすっかり銃後のそれへと変わっていく。長男のヴィンは街の名門ベルドン家の娘キャロルと愛し合うが、パイロットとして戦地に向かう。ミニヴァー氏はダンケルクに取り残された兵を助けるため、民間の船でドーバーを越える。そして、ミニヴァー夫人は夫や息子の身を気遣い、防空壕で爆音に怯えながら一日一日を暮らしていく・・・。


いわゆる銃後の生活を描いた映画です。主演は、賢夫人として当時第一人者であったグリア・ガースンと彼女との名コンビで知られたウォルター・ピジョン。何度も共演しているだけあって息の合った演技が楽しめます。舞台となるのはイギリスの小さな街。この街に暮らす人々の人間模様がミニヴァー家を中心として小スケッチのように綴られます。恵まれたミニヴァー家。夫は弁護士で暮らしぶりも良く、夫人は街でも有名な美人。鉄道の駅長は端正込めて育てたバラに「ミニヴァー夫人」という名をつけ、フラワーフェスティバルへの出品を狙います。大学で古い階級主義打破の意識に目覚めた長男のヴィンが恋した相手は、古い支配層を象徴する街一番の名門のベルドン家の孫娘のキャロル。次々と襲ってくる戦争の波に抗しきれずに、若いのに人生を生き急ぐしかないこの二人の姿には心が痛みます。特にキャロルの「ヴィンと一緒にいる間は楽しく笑って過ごしたいの。一人になれば泣く時間はいっぱいあるんですもの」というセリフには涙が・・・。国のため、敵をやっつけるためと、勇んで戦いに出ていく若者と、見送るしかない女性とのすれ違いながらも求め合う微妙な心の綾が何とも悲しいです。

ベルダン夫人はいわゆるかつての荘園の女主人。昔なら完全な支配階級であり、今でも「平民のくせに」なんてことを平気で言ってしまうお方。街で開かれるフラワーフェスティバルでは、夫人のバラが常に一等を取るのが暗黙の了解事項だったのです。しかし、今年は何とそれに挑戦する人が現れて街は大騒動。それが駅長の育てたバラ「ミニヴァー夫人」だったのです。徹底した階級差別が厳然として存在するイギリスにあって、それも小さな閉鎖的な街にあってこれは一つの革命でした。旧体制に対する無言の糾弾がここには隠されているような気がします。

グリア・ガースンは貫禄いっぱいで美しく、ウォルター・ピジョンはすっくと渋く格好良く、テレサ・ライトはとても愛らしい。グリア・ガースンはこの作品でアカデミー主演女優賞を、テレサ・ライトは助演女優賞を受賞しています。他にも作品賞、監督賞を総なめにしています。また、脇を固める頑固な大奥様デイム・メイ・ウィッティや駅長さんのヘンリー・トラヴァースなど役者が揃っています。特にフラワーフェスティバルでの駅長さんは良かったなあ。

この映画は、時節柄戦意高揚映画としての位置づけがされることが多いようです。確かに教会でのお説教などを聞くとそういったところも見受けられます。それでも、私は敢えてこの映画は小さな街の戦時下の人々のそれでも普通であろうとした生活を描いた作品と捉えたいという思いが強いのです。何故なら、今まで様々な映画や小説で読んできたイギリスの小さな街(但しかなり裕福な一家を主人公にはしていますが)の生活そのものがそこにはあるから。

夫や息子や愛する人を戦争に駆り出された者の待つ思いは万国一緒でしょう。防空壕での妙に平和そうな、それでいて爆音に震えるシーンは、日本の戦時中にも重なります。そんな中でも、イギリスの象徴であるガーデニングとバラに情熱を燃やして品評会を開く彼らの心意気には乾杯。同じ戦争でも妙に余裕が感じられる気がしたのは、国情や豊かさの違いなのでしょうか。何にしても戦争は辛い。犠牲になった人々のために立ち上がるのではなく、犠牲を出さない方向に進んでくれることを祈るのみです。


☆美人のミニヴァー夫人なのですが、時々ファッションセンスに?マークがつく気がします。衝動買いした帽子は素敵だけれど、それを買いに行った時の食卓のペーパーナプキンを重ねたような帽子は何だか変な気がしたし、ベルダン夫人が訪ねてきた時に来ていたドレスもドレス自体は良いんだけれど、ポケットが思いっきり変。これが当時の流行だったのかしら・・・。


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