動物園のオリの中
はみだしっ子シリーズPART2


三原 順

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2001/10/14

親という名を持つ保護者を否定して、自分たちだけで生きることを胸に誓うグレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人組は一人暮らしのレディ・ローズのアパートに潜り込みます。深夜に子供たちと出会ったレディ・ローズは酔った勢いで「面倒を見てあげる」と言ってしまったのでした。レディ・ローズの安アパートには住民がぎっしり。知り合いの子供たちを一時的に引き取ったと説明するレディ・ローズを住民たちはよく思いません。傷ついた鳥を救うために、早速、グレアムたちはアパートの子供たちと一戦交え、大人たちの批判を買います。レディ・ローズは同じアパートの人たちに疎まれることを恐れ、子供たちに人の目を考えるように怒ります。レディ・ローズが留守の間に部屋に入り込んだ他の部屋の少年たち相手に、またもやグレアムたちは大立ち回り。家の中はめちゃくちゃ。そしてサーニンが可愛がっていた鳥は死んでしまいます。レディ・ローズはアパートを追い出されることになり、4人も苦い心を胸に出ていくのでした。


レディ・ローズは彼女なりに素敵な人でした。酒場で歌を歌っていたということですが、彼女がしんみり歌うラブバラードを是非聞いてみたいものです。

最初にアパートを外から見たマックスが、あの中にはそれぞれに人がぎっしり詰まっていて、おまけにそれぞれみんな違うことを考えていると聞かされて脅えます。へえ、そういう考え方もあるんだなあ、と当時は目から鱗の思いで聞いていましたが、今となっては切実な問題になってきていますね。
「通りにでれば仕切もなく、誰が何を考えてるのか・・・まるでジャングルのまっただ中!」
というのがマックスを襲った考えです。まさにその通りですね。道を歩いていても人の考えていることはわからない。通り魔かもしれない、テロリストかもしれない、今はそんな時代になってしまいました。勿論この当時、作者の言いたいことは違っていたでしょうが、今はこれしか考えられない時代になってしまいました。
そのマックスの恐怖に対して、グレアムは
「人間には言葉があるよ」
と答えます。ホッとするような答えのはずなのに、これも今では言葉が通じない(言語学的にと言うことではなくてたとえ通訳を介しても)相手が世の中にはいるのだということを見せつけられてしまって、素直に受け止められなくなってしまった自分が哀しいです。

「他人とうまくやるためにはしたくない我慢もするし、他人の動きも見るし、他人も私を見ているわ。何故あんたたちは知らんぷりしてふんぞりかえっているのよ!?」
というレディ・ローズの叫びが今は素直に響いて来ます。

確かに4人組はレディ・ローズのところに置いてもらっているのだから迷惑をかけないように、という気持ちが稀薄・・・というよりは、グレアム以外はほとんどなしと言っていいでしょう。子供だからと言ってしまえばそれまでだけれど、子供だから・・・で済むような子供たちでないことはファンなら百も承知のこと。この頃、まだ彼らはそれほど大人の顔色を伺うことをしていなかったのでしょうね。こういった色々な経験を積むうちに、そういったことも覚えていくようになった。そして哀しいことに、それとともに更に自分の気持ちにふたをしていくようになってしまう。

サーニンの背中に張り付いていた鳥さんの最期はすごくショックでした。想像すると恐ろしかった。当のサーニンのショックは勿論言葉では言い表せないものだったでしょう。

最後にグレアムとアンジーがやりあう場面は子供心にちょっとショックでした。グレアムは私の中ではいつも冷静沈着なキャプテングレアムだった。でもそんなグレアムの中に潜む臆病な心を、いとも簡単にアンジーは吐き出させてしまいます。アンジーを見直した瞬間でもあったかな。

ひっそり静まりかえったアパートで、一人紫煙をくゆらせてお酒を飲むレディ・ローズの後ろ姿は哀感を誘います。この人も寂しい人だったんですよね。ほんのちょっとの間でしかなかったし、トラブル続きではあったけれど、話し相手がいて、お帰りなさいと言ってくれる相手がいた彼女の生活は、ちょっとはハッピーだったと思いたいです。
レディ・ローズの隣人、ヨットのおじさんアルフィーは私のお気に入りの一人です。もっと後のエピソードで再登場しますから、忘れないようにしましょう。

人間の動物園は本当に怖いです。みんなが観客であり、また同時に見せ物でもあるのですよね。疲れます。それでも、その人たちの中にはキャンディーをくれた女の子のような人もいるのだと信じて、また進んでいくしかないでしょう。


☆道徳的には推奨できないけれど、「どけ、アンジー!」と言ってカップを投げるグレアムは格好良かったです。勿論アンジーの足をからかう相手が悪いんだけれどね。


     花とゆめコミックス第一巻、愛蔵版、文庫にて刊行
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