ジュリエッタの嵐


美内 すずえ

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2001/8/20

ユーリア国の王女ジュリエッタは11歳。愛する両親と弟に囲まれて王女として幸せを満喫していた。唯一の心配は、王位継承権を持つ弟のヘンリーが血友病で小さな怪我にも神経をとがらせなければならないことだった。しかし黒い狼と名乗る夜盗の首領が国王一家を弾劾するようになり、国の中は不穏な空気が漂い始める。そして遂に革命の勃発。国王夫妻は殺され、ジュリエッタとヘンリーは生涯幽閉されることになる。しかしあるきっかけでジュリエッタたちは王党派の助けを経て、脱出に成功する。しかし頼みの綱の王党派の人々とは手違いで会えず、長い放浪生活が始まる。飢えにも寒さにも耐えジュリエッタを突き動かすのはひとえにユーリア国王女としてのプライドと王政の復活に対する希望だった。


1973年別冊マーガレットに前後編で掲載された作品です。大好きな話の一つでした。

幸せの絶頂の生活から一夜にして地獄へ突き落とされたジュリエッタはそれでも強く生き抜きます。彼女を突き動かした物は、ユーリア国再建の希望。それから、病気を抱えるヘンリーへの保護者意識でした。ちなみに、この作品で血友病という病気のことを知りました。この頃、マンガはあらゆることを教えてくれる家庭教師でした(笑)。

ジュリエッタの幽閉されている塔からの脱出の仕方は以前「新・ヒッチコック劇場」でも見たことがあります。ヒッチコック以前にこの脱出方法を編み出していた美内すずえ、恐るべし!・・・ってまあ、それまでにもこの方法を使った作品はあるのかもしれませんが。

王女のプライドだけは捨てないで放浪生活を続けるジュリエッタですが、庶民の生活に触れることによって色々なことを知るようになります。じゃがいもはこうやって生きて育つ。一枚の服を作るには糸を紡いで機織りにかけて切って縫って・・・と気の遠くなるような作業がある。どんな物でも欲しいままだったジュリエッタにはまさに晴天の霹靂だったでしょう。自分がいかに贅沢な境遇で安穏としてきたかをジュリエッタは知ることになるのです。そしてジュリエッタの固い信念がぐらつき出します。

ネタバレになるので深く語れないのが残念なのですが、つらら。一本のつららがこんな風に凶器に成り得るなんて!と大変驚き、もっとも記憶に鮮明に残りました。

黒い狼は黒髪長髪格好良いという、美内物のヒーローの王道を行った人です。革命の推進者で、それなのにその後の政治にはノータッチという思いっきり変わった人。一体誰が国のリーダーとなって、混乱を収めたのでしょう。

革命、幽閉、さすらいと3拍子揃った舞台であきらめずに生を求め続けるヒロインの成長ドラマです。


☆73年といえば「ベルばら」が絶頂期にさしかかろうという頃。革命物と聞くだけで、すぐに手を出していたものです。そういう話も多かった気がします。


マーガレットコミックス(絶版)
白泉社文庫  美内すずえ傑作選9「燃える虹」に収録
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