だから旗ふるの



三原 順
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2002/1/20

レディ・ローズの隣にいたヨットのおじさん(笑)から紹介されたマーチンさんを訪ねて行く道すがら、ちょっとしたことからグレアムと喧嘩になりアンジーは1人飛び出してしまう。うっかりと積み荷の中で昼寝してしまったアンジーは、電話も通じていない島へと運ばれてしまう。島の住人に名前を聞かれても答えようとしないアンジー。とっくにグレアムたちは自分を見捨てて行ってしまっただろうと考える彼の脳裏には、自分を捨てた母のことが蘇っていた。


はるか昔、初めてこの話を読んでラストでとめどもなく涙が流れました。「はみだしっ子」にはまる決定的な要因になったのがこのストーリーなのです。初めの2作で、「凄く良い!」と惹き付け、ここで滝のような涙で読者をはめる。なかなか凝ったテクニックです(笑)。

4人と言えども立派な集団。集団となれば自然にリーダーが出来る。彼らの場合、現実に生活していかなくてはならないわけですから、リーダーの責務は重大です。
彼らのリーダーは勿論グレアム。多数決で決めたわけでもグレアムが自分がなると言ったわけでもないのですが、とにかくグレアム。グレアムがそもそも他の仲間をホームレス状態から救ったというのが、最大要因の一つでしょうし、性格的にも真面目で責任感の強い彼には合っている。そして、子ども仲間では何よりも物を言う「一番年上」。
かくして自然とリーダーに決まっているグレアムに、アンジーが物申す話でもあります。アンジーとしては、グレアムの方が3ヶ月生まれが早いとはいうものの、基本的に同い年という認識があるでしょうし(学齢も一緒ですよね、彼らには関係ないけれど)、乳幼児じゃあるまいしこの年での3ヶ月は物の数に入らない。それなのに、リーダーとその他の3人ではあまりに違い過ぎる・・・とまあ、色々思うことがあるのでしょう。その気持ちはよーくわかる。まして、アンジーは幼い頃いつもお山の大将でした。その彼が、グレアム指揮下でいつまでもおとなしくしていられるわけがないというもの。あれやこれやの不満が噴出して、アンジーはグレアムに喧嘩を売り、遂には1人で飛び出してしまうわけです。

サイドストーリーでアンジーの過去が語られます。4人の中で、初めて過去が明らかになる栄えある最初となります。
伯母さんの家に預けられていたアンジーは、2週間に一度2日間だけ訪れる母親と過ごす日々を宝物のように感じていました。美しい母親イブは、映画スターになる夢をあきらめきれずに息子を姉に託していてそのことで姉妹は口論が耐えなかったのですが、アンジーはただただ母が好きで、彼女が来る日には屋根の上に登って旗をふるのです。そうすると彼女が駆け出します。「リフェール(アンジーの本名)、私のアンジュ(天使)」と言って。

でも、小児麻痺にかかり体が不自由になったアンジーは結局母に捨てられるのです。その後、3人の仲間と会って今まで何とかやってきたけれど、3人と特にリーダーのグレアムとの間に溝を掘ってしまったアンジーは、彼らとの日々も無理に葬り去ろうとします。彼らに見捨てられたのではない、自分から捨てるのだと言わんばかりに。母親に捨てられたトラウマがそうさせていることは言うまでもありません。それでも、一艘のボートが通るのを目にしたアンジーは、もう一度賭けてみようと思います。自分を求める者がいるのかどうか。自分を愛して、受け入れてくれる者がまだ存在するのかどうかを。
屋根に登って旗をふって合図しようとするのですが、なかなか旗がふりだせない。過去の記憶が蘇り、冷たい母親の顔が蘇り、もう一度絶望することが怖くて・・・。もうこのあたりで私は涙の洪水と共に読んでおりました。かなりの天の邪鬼かと思っていたアンジーに、こんな過去とこんなトラウマと本当はこんなに純粋な気持ちが隠れていたのかと思って・・・。
「はみだしっ子」を読み出したその時から私はグレアムファンでありましたが、アンジーにも相当心惹かれるようになった最初でもありました。

アンジーの伯母さん一家は良い人たちで、私は従兄のボビーが好きでした。ハンサムだし(笑)、面倒見の良い優しいお兄さんだったし。でも、ボビーがアンジーに決定的な一言を告げることになってしまったことがとても残念でした。ボビーもずっとそのことを気にし続けるだろうな、と思うと。
ずっと後の話で、グレアムだけは何とか住民票ぐらい手に出来るかもしれないけれど・・・みたいなことをアンジーが言いますが、この時に「はて?」と思ったものでした。グレアムには何だかんだ言ってもおじさんがついている。サーニンとマックスは本当に帰るところがないけれど。でも、アンジーは住民票が取れるかどうかは知らないけれど、この伯母さん一家は本当にどうにもならなくなった時は喜んでアンジーを迎えてくれるだろうにと。アンジーの気持ちがそれを許さないんですけれどね。出来るなら、グレアムとエイダが和解したように、アンジーとボビーも作品中で再会してお互い「あの時はごめん」と言い合ったならすっきりしたんですけれどね。

いじけていたアンジーは、再び旗をふることによって自分を縛っていた過去を切り捨て、新しい航海に乗り出すことが出来ました。そして、彼はグレアムをその航海のキャプテンとして認知します。この吹っ切れ方はいかにもアンジーらしくさばさばしています。グレアムの方がキャプテンとして適任だということは誰よりもアンジー自身がずっと感じていたことなんでしょうね。アンジーがキャプテンでは寄り道ばかりして危なっかしいし(笑)。意地っ張りでそれを認めたくなかった彼の心は、3人が自分の嫌な面も認めてそのまま受け入れてくれる真の仲間であったことを知った時に氷解します。

でも、もう一方の喧嘩を売られたキャプテングレアムはどうだったんでしょう。「キャプテン」なんて呼ぶアンジーの気持ちが知りたいと思いつつ、喧嘩したくないからモヤモヤをしまい込んでおこうかと悩む相変わらずの気遣いよう。
のんびり屋根に登って夕陽を眺めるのも良いけれど、本当は2人で徹底的に話し合って喧嘩しても良いからお互いの(特にグレアムの)心をさらけ出していたら、今後のストーリー展開も変わっていっただろうに、と考えるのは余計なお世話?まあ、グレアムがそんな性格だったら話が成り立たなくなりますね(苦笑)。


☆昔、別冊「花とゆめ」で「はみだしっ子特集」があった時にストーリーとストーリーをつなげるために、少しばかりの後日談が載っておりました。この話の後日談は、サーニンがボートが漕げないといじけるマックスに「アンジーを見つけたらオレがつき合って漕がしてやるよ」と約束したためにとんでもない羽目に陥るというものでした。笑えました。

も一つ☆
イブ・ホーンのデビュー作、タイトルが「TAKE ME WITH YOU」なのよね。

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