ファラオの墓


竹宮 恵子

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2001/7/16

4000年前のエジプトは小国がしのぎを削る戦乱の地だった。小国エステーリアの第2王子だったサリオキスは、軍事大国ウルジナに国を滅ぼされ、奴隷の身まで体験することになって固い復讐を誓う。身分を明かさぬままウルジナ王スネフェルにいたぶられて瀕死の処を、スネフェルの婚約者アンケスエン姫に救われる。しかし、姫の処を出た後、奴隷としてエステーリアの人々と労役に就かされるが、叛乱を興した罪で処刑が言い渡される。しかし、処刑を担当したムーラ人イザイの機転で命を免れ、やがて彼は砂漠の鷹としてエステリア人、ムーラ人をはじめ砂漠の民のカリスマ的救世主としてあがめられるようになる。幼なじみのベヌ・ティトとも再会し、イザイという心強い右腕も得て、隣国アビドス王の支援も取り付け、ウルジナを滅ぼすために立ち上がる。一方、サリオキスにナイル川に投げ入れられたことから命を救われた妹のナイルキアはウルジナで有力者のメネプ神官の養女として暮らすようになるが、ふとしたことから出逢ったスネフェルと激しい恋に落ちる。スネフェルと兄サリオキス、いわば敵同士の二人の間に挟まれナイルキアの苦悩は深まる・・・。


古代エジプトを舞台にした壮大なスペクタクルロマンです。これは映画にしても良いぐらいの、スケールの大きさを持っていますね。
古代エジプトに、何故金髪碧眼の美少年が何人も存在していたか、という疑問は別にして(笑)。

ファラオはご存じ王様のことです。ウルジナ王スネフェルはまだ若いのに、奴隷をこき使って大規模なファラオの墓を作らせています。これは当時のエジプトでは当たり前のことではありましたが、サリオキスの父はそんなことはしなかった、と語られているように、二人は育ちも考え方も根本から違います。

スネフェルはネロも真っ青になりそうな暴君で、人を殺すことを楽しみにぐらいにしか思っていないとんでもない馬鹿王として最初描かれます。でも、根っから馬鹿というわけではなくて、彼の孤独が段々彼をさいなんでいった結果で、ナイルキアとの愛に目覚めた後は、真の国王たらんたる努力を繰り広げる良さをも持っている人です。まあ、でも現実にこんな王様は絶対願い下げ(笑)。

対するサリオキスは善の象徴でしょうか。砂漠の鷹として、臣民の熱狂的な支持を受けるカリスマ性と美貌の持ち主。本人も「鷹」たらんと努力するのですが、彼は人間的なところが捨てきれない。それは残して来た妹ナイルキアへの思いで、ナイルキアを巡っていつも勝手な行動を繰り広げては騒ぎを起こす困ったところがあります。まあ、この肉親の情はわかるんですけれどね。

サリオキスの右腕として、というより現実にサリオキスを導いていると言ってもいい側近イザイの存在は強烈です。顔には傷跡だらけの屈強な大男で、力は滅法強くて武術に長け、かつ世事にも長けている、大変頼れる存在です。実際に指導者たるもの、こんな側近がいたらどんなに心強いでしょう。美貌が売りの血気盛んだけれど、どこか危うい若者達のなかで、本物の大人の男として圧倒的な存在感を示してくれます。ハンサムにはほど遠いルックスではあるけれど、一番印象に残った人です。

同じ側近でもベヌ・ティトはサリオキスとは幼なじみの間柄ということもあって、サリオキスのことになると感情的になりすぎるところがあります。同じく闘いは滅法強いんですけれどね。伯父さん曰く「お前は腹芸が出来ないから」。要するにみんな若いのですよね。

薄衣に妖しいまでの美貌の少年たち・・・といえば、やはり竹宮恵子の十八番でもありますね。そこに古代ロマンが重なるのですから、その魅力はいかほどか。しかし、戦闘シーンは迫力満点で、処刑シーンなどもちょっと残酷で、そのあたりもかなり変わった少女マンガではあります。

大河ナイルは国同士の小競り合いも、人同士の愚かな争いもすべて飲み込んで悠久の流れを続けるのです。この壮大なる自然の前にあってアリのように小さい人間同士の争いはさらに馬鹿馬鹿しく愚かそのものと感じられます。

美少年ファン、古代ロマンファン、歴史スペクタクルファンには、絶対お勧めの懐かしのマンガです。


☆女性ではアンケスエン姫が一番好きでしたね。でも、存在感を示していたのはやはり皇太后か。おトキさんって名前の人もいて、思わず「♪知床の岬に〜」って歌ってしまう・・・。


中央公論社愛蔵版、文庫にて刊行
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