ベルサイユのばら


池田理代子
おすすめマンガ
(C) 2001 Paonyan?. All rights reserved



2001/1/22
 いわゆる劇画ブームの先駆けとなった「ベルばら」は少女漫画史上最も有名な作品のひとつと言っても良いでしょう。マンガなど縁のない人でも、社会ブームにまでなった「ベルばら」の名前ぐらいは知っているのでは?そして、私にとっては生まれて初めて骨の髄までどっぷりはまったマンガでした。

 これはフランス王妃マリー・アントワネットとその恋人フェルゼン、女性ながら男装して軍人として生きるオスカルと彼を愛するアンドレの、若かりし幸せな時代から、革命の泥沼へと至る怒濤の時代の話です。ロココの宮殿、華やかなドレスの数々、などため息が出る豪奢な世界への憧れは、未知の国未知の時代をグッと身近な物に引き寄せてくれました。小学校の授業で世界史(今思えば要約みたいなものなんですが)を習うことになったとき、フランス革命の項が待ち遠しくて仕方なかったことを覚えています。

 でもあの頃は憧れの占める部分がほとんどだったけれど、作者の意図はオスカルに凝縮されていたんでしょうね。オスカルが男装の麗人であったのは少女マンガとしてのドラマ性を狙ったのもあるでしょうけれど、彼女が軍人であったことによって革命に身を投じる様がリアルになるわけでもあります。オスカルは貴族の娘で、マリー・アントワネット付きの近衛連隊長で、アントワネットを敬愛しながらも革命に身を投じて市民側に付きます。それは彼女が生活に追われる身でなく、学究心が豊かであったゆえに触れることになった様々な書物、そして近しい存在であったアンドレやロザリーが受ける微妙な差別を見聞してしまったことなどが影響しているのではないでしょうか。作者は今までにも戦争や階級、貧困など様々な悲劇や差別を描いてきたから、少女マンガの思い切り豪華絢爛なベールに包んだこの平等への闘いの物語は、彼女にとっても当時の集大成といえたのではないかと思います。

 ただ私がひっかかったことがひとつあります。オスカルは市民側に付いたけれど、国王や王妃の処刑は望まなかったと思うのです。マリー・アントワネットは現実を見つめられない困った人ではありますが、それでもオスカルは彼女が好きでした。もし、オスカルが生きて革命を見届けていたら、国王一家が置かれた状況に平静でいられたとは思えないのです。国王一家の逃亡に手を貸そうとさえするのではないでしょうか。とするとオスカルはこっちにいて、次はあっちについて、それからまたまたこっちに戻った裏切り者になってしまう。おまけに彼女は自分の選んだ道について思い切り悩むでしょう。となると彼女の最期は悲劇だけれど、彼女のためには良かったかな、とも思ってしまいます。

 それからアンドレ・グランディエ。私の初恋の人でした(笑)。私はまだ一桁の年でしたけれど、男性の理想像を体現してくれたのがアンドレでした。ハンサムで優しくて包容力があって海より深い愛情で包んでくれる・・・。彼のオスカルへの長年の片思いは見ていて可哀相だったけれど、結ばれないで欲しいという思いも心の中にありましたね〜。彼の印象は強烈過ぎて、私のマンガ歴の中でも彼を越える印象を与えた大人の男性キャラクターっていたかなあ、となるとちょっと即答出来ません。でもおかげで理想が高くなってしまって(笑)。アンドレは理想と現実とのギャップに悩む原因を作った責任者でもあります。

 世でブームになるずっと前から「ベルばら」が好きだったけれど、ちゃんとブームにものって宝塚の舞台も見たし(但しテレビで)、レコードも買いました。「愛それは甘く〜」ってあの歌、今でも歌えます。そして極めつけは映画。ジャック・ドゥミーという名匠が監督して作られた日仏合作「ベルサイユのばら」の公開では映画館に走りました。映画の質はいまいちという評価が一般的ですが、ジャック・ドゥミー、ミシェル・ルグランというフランス映画、いや世界の巨匠達が作っているというのは大変な感動でしたし、アンドレ役バリー・ストークスは私好みのハンサムでしたので、私の中では結構思い出の作品になっています。オスカル役はドミニク・サンダ、ジェーン・バーキンなど色々な候補の名が挙がったけれど、モデル出身のカトリオーナ・マッコールが射止めました。ドミニク・サンダは結構好きなので彼女のオスカルも見てみたかったな。とても美しいのにちょっと中性的なところも感じられるドミニク・サンダは結構合っていたのでは。今ではテレビ放映さえもお目にかかれないのが寂しいです。

 「ベルばら」のおかげで世界史が好きになりました。ありがたいことです。ついでにフランスも生まれて初めて大きな関心を持った外国でした。おかげで今でもオリンピックでもワールドカップでもフランス選手というだけで何となく応援してしまうのでした(笑)。どこまでもどこまでもどっぷり浸かっていたけれど、青春と呼ぶにはまだあまりに多くの年月が必要だったあの頃、部屋にデカデカ張ったオスカルとアントワネットの(アンドレは載ってたかな?)のポスターは宝物でした。♪ああ〜ベルサイユにバラが咲く〜

☆何なの、その目は。文句があるならベルサイユにいらっしゃい!


集英社マーガレットコミックス、文庫、中央公論社愛蔵版、文庫にて刊行
Ads by TOK2