エースをねらえ!


山本 鈴美香
おすすめマンガ
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2001/2/26

  週刊マーガレットで「ベルサイユのばら」と人気を二分していたスポ根マンガです。

「♪コ〜トでは誰でも1人1人きり〜」の主題歌で知られるアニメでも有名ですね。

 テニスの名門高校西高の岡ひろみはある日突然新任の宗方コーチに選手に抜擢されます。テニス部には花形お蝶夫人をはじめ実力者が揃い、誰もがひろみの抜擢にとまどいと嫉妬を隠せません。冷たい目の中でひろみはもがき苦しみ涙を流し、やがてテニスに目覚めコーチの手で実力を開花され世界を目指していくようになるのです。

 「エースをねらえ!」の主人公は勿論ひろみですが、恐らくこのヒロインを完全に喰っていたのがお蝶夫人でしょう。かくいう私も昔々「お蝶夫人と呼んで」と友だちに頼んで成りきっていた(笑)憧れの人でした。それから尾崎さん、男子テニス部のキャプテン。とてもとても好きでしたね。藤堂さんの相棒として有名な人ですが、私には藤堂さんが尾崎さんの相棒でした。しかし、今思えば彼らは信じられないような高校生で、あんな大人びた(老けた?)高校生がいるわけはないのですが、何分まだ小学生だった私には高校生も立派な大人の範疇でして、高校というところはああいう人たちがいるのだ、と素直に信じておりました。そんなはかなき夢を抱かせたことは作者の罪です(笑)。

 「エースをねらえ!」の革新的だったところはスポーツに一種の哲学を持ち込んだところでしょう。「この一球は無二の一球なり」とか、お蝶様の「負けるのを恐れるのはおよしなさい。ただ力を出し切らないプレーをすることこそ恐れなさい」などのセリフはそれまでの根性、勝利のスポ根マンガとはどこか一線を画していた感触を持ったことを覚えています。

 それからスポーツと言えば当たり前だった魔球、隠し技の類が全くなかったこと。これは当時としては革命的なことではなかったでしょうか。宗方コーチが自ら言っていたと思います。「魔球の類に憧れるな」と。どこか夢物語だった少女マンガの世界を現実に近いところまで持ってきた転換期の頃だったのでしょう。まあ、お蝶様などの高校生像は到底現実的とは思えませんが。

 何故名門校とは言え、西高にばかり超高校生級の生徒が集まるのか、とか、全日本ジュニアの候補生ってこの県では西高生とお蘭だけで埋まっているけれど他の高校はどうなっているんだ、とか、つっこめばキリがないけれど、色々な疑問を抱きつつもやっぱり大好きなマンガでした。例によって天の邪鬼な私は、お蝶夫人や尾崎さんや千葉さんなどの主要キャラは勿論なのですが、太田コーチとか宗方コーチのおじーさん、おばーさんとか脇の人たちを見るのも楽しみでした。 

でも10巻以降、大先輩たちが何故かみんな必死にひろみの後押しに回るようになって悲しかったですね。1人の天才を育てるためにそこまでみんな捨て石になるわけ?彼らだって立派に世界に出ていけるのに、って。それに彼らの進路はどうなるんだろう、と大まじめに悩みましたね。もうひろみのことなんて眼中になかった(ひろみがきらいなわけではありません、念のため)。

 お蝶様は法科でその気高さにふさわしくあなたは将来弁護士を目指すだろうって、海に行ったとき尾崎さんが独り言で言っていました。進む道も同じ、ってつまり尾崎さんもその道に進むってことじゃない?ところが話も終わりに近づくと藤堂さんと一緒にコーチを目指すって言い出すし、何だかよくわからなくなってきたのでした。皆さんが勉強しているシーンってほとんどないのに、国立一期校(時代ですね〜)に一発で合格したそうだし(それも皆同じ大学)・・・。やっぱり彼らの学生生活は夢物語に彩られていましたね。

 アニメはお蝶様がひろみに負けるというシーンがあって、これが許せませんでした(笑)。原作ではお蝶様はひろみに負けたことはなかったんですよね。ひろみが実力No1になってお蘭に勝っても、お蝶様との直接対決はなかった(お蝶様が怪我して入院したのでした)。弟子はいつか師匠を超えるものですが、それを敢えて原作では描かなかったことをちょっと救いに感じたものでした。

 このマンガの影響でテニスが大ブームになりましたよね。テニス部の人数も急激に増えたという話でした。

 ひろみファンの方、ご免なさい。「エースをねらえ!」はやっぱり私にとってはお蝶さまのお話なのでした。

☆マンガの中に出てきた若手のアイスドール、クリス・エバート。後年実物を知ってすっかりファンになったものでした。でもそのクリスも遙か昔に引退・・・。年月ですな。

  マーガレットコミックス、中央公論社愛蔵版、文庫で刊行
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