ストリート・ボーイズ

Street Boys

ロレンゾ・カルカテラ
Rorenzo Carcaterra

新潮文庫
おすすめ本
(C)2001〜 2005 Paonyan?.
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2005/2/26

1943年9月、イタリアを戦争の渦に巻き込んだムッソリーニが失脚し、イタリアは同盟国であったナチスドイツに蹂躙されていた。南部の港町ナポリは、連合軍の拠点となり得る港を持つがために破壊の対象とされ、住民達は容赦なく殺され追い立てられていた。すっかり人気がなくなったナポリの街でひっそりと生きる子どもたちがいた。その数300名。今まさに破壊されようとする故郷を守るため、子どもたちは16歳のヴィンチェンツォをリーダーにして立ち上がった・・・。


第2次大戦の中でも異彩を放つ「ナポリの4日間」をテーマにしたフィクションです。これはイタリアのファシスト政権が倒れて休戦条約を締結したことを裏切りとみたドイツ軍がイタリア全土に侵攻した頃の話です。古い歴史を誇る街ナポリは、ドイツ軍と連合軍がぶつかる最前線となってしまい、市民たちは苦しめられます。ドイツ軍から立ち退きを命じられ、強制労働に従事させられ、横暴の限りを尽くされた挙げ句、吹きまくる殺戮の嵐に立ち向かうために市民達が蜂起した闘いが「ナポリの4日間」と呼ばれるものです。史実としては、主に女性たちが立ち上がったということですが、この小説では親をなくした子どもたちが一致団結して立ち上がるというハラハラドキドキの展開になっています。

リーダーのヴィンチェンツォにしてまだ16歳。副官役のフランコは14歳。小さい子どもたちは7歳、8歳という文字通りの少年たちは、それぞれ家族を殺されたり離ればなれになったりして、ナポリの片隅でひっそりと生き延びていました。その彼らが、いよいよ街に入ってきたナチスを相手に戦うことを決意し、集まります。その数300名。しかし・・・あくまで少年なのです。確かに彼らのほとんどが肉親の死を目にしていて、死がいかなるものか戦争がいかなるものか、その残酷さは身に染みていたはずです。ただ、自分自身の手で人を殺したことなどあろうはずもなく、その意味ではやや戦争ごっこのような勇ましさもあったかもしれません。しかし、闘いの火ぶたが落とされた時、これが現実の戦争だということを彼らは否応なく知らされるのです。次々と訪れる友の死。次の瞬間に訪れるのは自分の死かもしれない。それでも彼らは雄々しく闘い抜きます。怪我をした戦友は決して見捨てない。見上げた兵隊魂です。武器は、倒した相手兵士から奪った物。勝手知ったるナポリの街を、圧倒的な地の利を活かしてナチスを煙に巻く闘いぶりです。

ただ、勿論子供たちだけで全てを遂行したわけではありません。任務途中で仲間をなくし、ナポリに迷い込んだアメリカ軍サンダーバード歩兵師団のスティーブ・コナーズがプロの力で少年たちを導きます。そして、コナーズの良き相談相手かつ参謀としてナポリで機関士をしていたカルロ・マルディーニが支えます。息子たちを戦争でなくし、飲んだくれの生活を送っていたマルディーニでしたが、その豊かな人生経験を生かして少年たちを守るために縦横無尽の活躍を繰り広げるところは痛快です。そして、そのマルディーニの美しい一人娘ヌンツィアも、機関銃を持って少年たちと一緒に街を駆け抜けます。

小説としてはとにかく面白い戦争ものに仕上がっています。弱きが強きを挫くその姿はどうしても痛快感を感じてしまいます。でも、敵であるナチスドイツの司令官にもちゃんと人間的な横顔を与えています。そして、闘いの後に待ち受けるのもまた結局悲劇であることも嫌というくらい痛感させてくれるのです。家族の恨みを果たすため、自分たちの街を守るため、少年たちには戦うための大義名分があったわけですが、その彼らに倒されたドイツ兵の中には自分たちより少しばかり年長でしかないような兵士も多数含まれていました。倒した兵士の臨終の場に立ち会おうとするイタリア少年の姿が何とも哀しいです。

しかしながら、イタリアといえばカルチョのお国。ナポリの少年たちも当然の如く生まれた時からサッカーボールを蹴っているような子ばかりで、驚くような妙技をナチスの前で披露したり、アメリカ兵のコナーズとのフットボール談義で思いっきりちんぷんかんぷんな話になってしまったり。そう、アメリカでフットボールといえばアメリカンフットボール!「手を使うんじゃあ、フットボールとは言えないよな」なんて子どもたちが言うところもおかしい。サッカーを使った大作戦もあるのでお楽しみです。

作者のカルカテラは『スリーパーズ』で全米にセンセーショナルを巻き起こした人です。豪華キャストで映画化もされましたね。さすが、少年を描く巧さには定評があります。

少年たちの友情の深さに胸が熱くなり、その境遇に涙し、大活躍に拍手し、最後に訪れる無常観。彼らがこんな悲しみや苦しみを知らず、楽しくサッカーボールを蹴っていられる少年時代を送れなかったことに悲しみを覚えずにはいられません。


☆ナポリの女性と言えばソフィア・ローレンが映画で演じた役が思い出されますが、やっぱり強い!



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