パディントン発4時50分

4.50 from Paddington

アガサ・クリスティ
Agatha Christie

早川文庫
おすすめ本
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2004/3/6

クリスマスの買い物をロンドンで満喫したエルスペス・マギリカディが帰りの電車の中から見た衝撃の光景。並んで走る別の列車の座席で、男が女性を絞め殺すその瞬間を彼女は見てしまったのだった。警察に通報しても、寝ぼけていただの、老婦人の典型的勘違いだのと本気にはしてもらえない。そんな彼女が相談した相手は友人のミス・マープルだった。エルスペスの話を信じたミス・マープルは、実際電車に乗って女性の死体がどうなったのかの検討をつける。そして、その死体が置かれた可能性の大きい場所、ラザフォード・ホールのクラッケンソープ家に旧知の家政婦ルーシー・アイルズバロウを送り込む。


ミス・マープルの本領発揮の名作の誉れ高い作品です。とは言っても、この作品でミス・マープルはそんなに頻繁に登場するわけではありません。ミス・マープルに代わって、疑惑の家に潜入するのは家政婦のルーシー。まさに「家政婦は見ていた!?」(爆笑)。このルーシー、まだまだ若く、その経歴も変わっています。オックスフォード大学の数学科をトップで卒業して家事の道で身を立てようとして、短期契約で一流の家々を回るという、今で言うなら派遣家政婦というところでしょうか。その家事の腕は超一流で、一度彼女に来てもらった人は例外なくずっといて欲しいと思うまさにスーパーハウスキーパー。うーん、私も彼女に来て貰いたいです。

そのルーシーが乗り込むクラッケンソープ家は、お金持ちの旧家ですが、例外なくケチで病身(?)の当主と、お金に困っている子どもたちの図式。当主ルーサーは、絶対子どもたちより先に死ぬものかと心に決めて子どもたちが来ると、食費がかかるだの何だかんだと文句タラタラ言うスーパーケチ。彼の面倒を見ているのは長女のエマ。長男エドマンドは戦争で亡くなり、次男セドリックは遊び人の画家。次のハロルドは表向きやり手の金融マンで、次のアルフレッドは何をして暮らしているんだか良くわかない人。亡くなった次女の夫ブライアン・イーストリーとその息子のアレグザンダーもしばしばやってきます。かつて戦争の英雄だったブライアンは、今はしょぼくれた男性になってしまい、12かそこらの息子に心配される始末です。そして、起こる事件の数々。エマと一家の主治医クインパーのロマンスや、エドマンドが亡くなる前に結婚したフランス人妻マルティーヌの話も絡んで事件は謎とロマンスとロマンスと謎と・・・。

ふと電車の窓から外を見たら、まさに並行して走っていた電車の殺人事件を目撃してしまったという設定がとても秀逸です。このオープニングを読んだら、もうこの話はやめられません。ちょっとヒッチコックテイスト(ヒッチコックが先か?クリスティが先か?)と思ったのは私だけ?普通だったら、一笑にふされそうなこの話を信じて、実際にその時刻の電車に乗ってしまうミス・マープルの行動力もあっぱれです。ミス・マープルの目となり耳となって動くルーシーという女性を配したところがこの作品の新鮮な魅力でもあります。さてさて、この話どうなりますことやら。


☆犯人当てには関係ないけれど、ロマンス面でネタバレ注意。
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テレビドラマ版で見ていたので、ルーシーの選ぶ相手はてっきりあの人だと思ってました。でも、原作では特に示されていないじゃありませんか。さあ、一体誰なんでしょう?ミス・マープルの予感した人は誰?是非ご意見を!


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