比類なきジーヴス

The Inimitable Jeeves

P.G.ウッドハウス
P.G.Woodhouse

国書刊行会
おすすめ本
(C)2001〜 2005 Paonyan?.
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2005/6/18

ロンドンでのんびり暮らす有閑青年バーティの周りは、何かとトラブル続きだった。親友のビンゴは、一目惚れ魔の如く次から次へと女性に恋をしてバーティに仲立ちを頼む。女丈夫のアガサ伯母さんは、バーティを結婚させようと次から次へと女性を紹介する。従弟で双子のクロードとユースタスは、まだ学生ながら揉め事を起こす天才たち。彼らに振り回され続けるバーティが、ただ一人頼りに出来るのは執事のジーヴスだった・・・。


イギリスでは国民的書物と言われるらしいバーティ&ジーヴスシリーズを、恐らく独立した話として訳出した初の書ではないでしょうか。イギリスの古き佳き時代。バーティは、不労所得でのんびり暮らす青年有閑紳士。彼の城であるロンドンの快適なアパートメントを管理維持してくれるのは、執事のジーヴスです。このジーヴス、とにかく執事としては完璧な男性。「熱すぎず、甘すぎず、薄すぎず、濃すぎもしない、ミルクの量もちょうどいい、また受け皿に一滴たりとも茶はこぼれていない」状態で朝のお茶を運んでくる完璧な執事さんです。しかし、彼の能力はこれだけではありません。バーティが目覚めるのを一種のテレパシーで感知(笑)することの出来る人。そして、何よりもよろずトラブル解決屋さん。次から次へと起こるもめ事や頭の痛い出来事を、知らぬ間に魔法の如く解決していってくれるそれは有り難いお人なのです。まさしく執事の鑑!人は良いけれど、かなり頼りないバーティは、ジーヴスなしではとても暮らしていけないわけです(笑)。だから、バーティが主人の筈なんだけれど、段々どっちが主人だかわからなくなってくるというシチュエーションが楽しめます。

また、バーティという人は何故かトラブルに事欠かない人なのです。親友のビンゴは、お金持ちの伯父さんがくれるお小遣いに頼って生活しているのですが、彼がとにかく惚れっぽい。喫茶店のウエイトレスから、家庭教師のバイトをした先のお嬢さんまで、次から次へともしかして女性とみれば恋に落ちるのでは?と思うくらい、いつもいつも恋の花を咲かせている人なのです。かといって、自分で大したアクションを起こせるでもなく、生活も不安定でいつもバーティを頼ってくるのです。で、バーティもあれこれアドバイスをしたり一肌脱いだりするわけですが、余計話をややこしくしてしまう・・・とまあ、こういったわけです。他にも、バーティにとって恐怖の存在、強烈なパーソナリティを持つアガサ伯母さんがあれこれバーティに言いつけますし、台風のように襲来する双子の従弟クロードとユースタスもいます。さらに、アガサ伯母さんがバーティにくっつけようとする女性たち。とにかくバーティの周りにはトラブルがいっぱい!

イギリス小説の多くは、「ウッドハウスを知っていたらもっと楽しめる」と言われているくらい、今や古典になりつつある話です。もっと早くに知っていたら、色々な小説の読み方も変わったかも。「サラ・コールドウェルのテイマー教授もののミステリーだってウッドハウスを読んでいたほうがもっとおかしい。セイヤーズのピーター卿とバンターの関係を面白がるなら、教養としてバーティとジーヴスの関係を踏まえていた方がいい。シャーロット・マクラウドのコージー・ミステリーを愛好する人ならばそこに登場する伯父さんやら伯母さんやら従兄弟やらの世界をバーティの周囲のそれと重ねるだろう」(後書きより)とあるのを読むと、イギリス小説の基礎という気がしてきます。

とにかくポーカーフェイスで何事も自分流に解決してしまうジーヴスが面白く、そのジーヴスを使っているようで実は使われているバーティが面白く、ユーモアたっぷりで思わずフフフと笑ってしまう小説なのでした。

☆テレビドラマもあるそうで、是非見てみたい。



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