セシルの魔法の友だち

Jean-Pierre Omnibus

ポール・ギャリコ
Paul Gallico

福音館書店
おすすめ本
(C)2001〜 2005 Paonyan?.
   All rights reserved



2005/4/2

1960年代の南フランス。カンヌの近くの花農家で暮らすセシルは、ある日ペットショップで見つけたアビシニアてんじくねずみに一目惚れ。彼をジャン=ピエールと名付け、なけなしのお小遣いをはたいて家に連れ帰ります。それから、セシルとジャン=ピエールの思いっきり楽しい生活が始まりました。ジャン=ピエールは「とびっきりのてんじくねずみ」。ある日、ほんの一時だけセシルと言葉が通じたり、かと思えば誘拐されてセシルを思いっきり嘆かせたり、挙げ句の果てには世界旅行に出掛けてしまうのです。


この世に数多の一目惚れがあるものの、これはちょっと変わった一目惚れによるラブ・ストーリーかもしれません。女の子は8歳のセシル。男の子は、てんじくねずみのジャン=ピエール。たった一つ違っていたことは、ジャン=ピエールがとびっきりのてんじくねずみだったことです。セシルは最初は8歳の女の子。最後にはもうじき12歳の女の子に成長しています。これは、7年の月日を費やして書き綴られた4つのお話を、一冊にまとめて出版したものです。とにかく、セシルは最初から最後までジャン=ピエールが命。世界で一番好きなのは何と言ってもジャン=ピエール(但し、パパとママの次に)。ジャン=ピエールが好きなのもセシル。もっとも、ジャン=ピエールは結構浮気している気もしますが(笑)。ジャン=ピエールと一瞬だけ言葉が通じたり、独自の方法でセシルに連絡を取ってきたり、とジャン=ピエールは魔法が得意な「とびっきり」のてんじくねずみであることを次々に証明してみせます。セシルは、ますますそんなジャン=ピエールが大好きになり、離ればなれになる時があってもジャン=ピエールの力を信じるようになっていきます。

作品中、最高のエピソードはやっぱりジャン=ピエールの世界周遊旅行でしょう。どこでどうやってジャン=ピエールが世界旅行に出掛けることになるのかは、読んでのお楽しみ。ただ、行く先々でジャン=ピエールは愛され、まるで皇族であるかの如く丁重に扱われる様は読んでいて微笑ましくなります。それに、ジャン=ピエールがカンガルーのアンジェリークと仲良しになりお腹のポケットに入ったり、サーカスのムッシュウ・フリッポと仲良くなる様もジーンとします。楽しいばかりではなく、人生の悲哀をもさりげなく語っている展開は一抹の淋しさをも感じさせるのでした。

セシルとジャン=ピエールに振り回され続けるセシルのパパとママ、ムッシュウ・デュランとマダム・デュラン。マダムはいつも娘に優しいママンですが、ムッシュウ・デュランは時にねずみ騒動にキレてしまうこともあります。しかし、このムッシュウ・デュランはこの作品の中でもピカ一のキャラクター。何だかんだ言いながら、ホロリと情にほだされ、挙げ句少年時代の夢を思い出して弾けていく様は、見ていて思わず笑えてきます。

ジャン=ピエールの愛らしさも素敵だけれど、それに振り回されながらも何故か癒されていく大人の様にも凄く惹かれる話です。さすが、ポール・ギャリコ。


☆さりげない農園物語の様相を呈しているけれど、舞台はカンヌ近郊。え〜?コートダジュール?最高にリッチなリゾート地ではないですか〜。もう既にグレース・ケリーがモナコ王妃になっている頃ですよね。


Ads by TOK2