犬は勘定に入れません
   ーあるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎


TO SAY NOTHING OF THE DOG or How We Found The Bishop's Bird Stump At Last

コニー・ウィリス
Connie Willis

早川書房
おすすめ本
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2004/8/7

ネッド・ヘンリーはオックスフォード大学史学部の学生。猛女レイディ・シュラプネルの命令で第2次大戦中に焼失したコヴェントリー大聖堂の「主教の鳥株」を見つけるために、何度も何度も20世紀と21世紀をタイムトラベルで行き来させられていた。ひどいタイムラグにかかったネッドは、休養のために19世紀ビクトリア朝のイギリスへ送り込まれる。しかし、降下した場所でいきなり偶然知り合った青年テレンスに請われてボート代を出す羽目に。おまけにテレンスと何故かオックスフォードのペディック教授と犬のシリルとボートで旅する羽目に陥った。このボートの3人男(+犬一匹)は、今度は思わぬ偶然からミアリング家に滞在することになる。そこには、ミアリング大佐とレイディ・シュラプネル顔負けのミアリング夫人と美人だけれどわがまま放題の娘トシー、執事のベイン、プリンセス・アージュマンド、そして同じオックスフォードの女子学生で先にこの時代に降下していたヴェリティがいた。ネッドとヴェリティの余計な手出しが、ミスターCと結婚するはずだったトシーの運命を変えテレンスと出会わせてしまい二人が恋に落ちてしまったために、歴史が大きく変わることを知った二人は、何とか歴史を軌道修正するために頑張るのだが・・・。


これはれっきとしたSFです。しかしながら、タイムトラベルする先が19世紀ヴィクトリア朝時代。優雅な上流社会の生活を満喫する人々の間に突然降り立ったネッドの困惑ぶりが笑わせてくれるコメディでもあり、さらにミステリーの要素も兼ね備えています。ヒロインのヴェリティは30年代専門に降下しているので、何とアガサ・クリスティの新作(!)を読んでいて「灰色の脳細胞を働かせて考えましょう」なんてことを言ってのけるのであります。他にもドロシー・セイヤーズなどを読んでいて、いちいち推理するたびにこれらの話が出てきます。とっても大事なキーワードも出てくるのですが、ここでは勿論言いません。ミステリー好きなら思わずにやにやすること請け合い。

ネッドは何とものどかなちょっと頼りない青年で、21世紀の現世界で一目で魅了されたヴェリティに19世紀で逢ってちょっと気もそぞろ。ネッドと知り合う青年テレンスもまた何とものどかなお坊ちゃんで、運命のいたずらから、ミアリング家の娘トシーと恋に落ち婚約してしまい、これが歴史を変えてしまうことになってネッドとヴェリティを慌てさせます。かくして、ネッドとヴェリティは、自分たちの責任を感じて過去と未来を行き来しては、歴史修正に躍起になります。トシーの日記から、本来トシーはミスターCと結婚する筈だったことを知り、「ミスターCを探せ!」作戦が始まるのです。迫り来るタイムリミット。コヴェントリーでトシーとミスターCが恋に落ちることを知ったネッドは、教会の牧師さんから駅の職員まで会う人会う人の名前を聞きまくります。Cから始まらないかと・・・。もう大爆笑です。さらに、19世紀特有の色々な礼儀作法に右往左往して、当時としてはマナー違反の数々を口走りそうになるところなども大爆笑。これは立派なコメディ作品でもあります。

登場人物も多彩で、のんびりぼんやり系のネッドやテレンスの他に、典型的変わり者教授のペディック教授、はるばる日本から取り寄せるくらい金魚大好き人間のミアリング大佐、実に騒々しい19世紀版猛女のミアリング夫人。口さえ閉じていれば十分に愛らしいトシー。本が大好きでトインビーだのドストエフスキーだのと口走る執事のベインなど、相当個性的且つ魅力的キャラクターが満載です。そして、勿論シリルとプリンセス・アージュマンド。

ヒラヒラドレスと優雅な庭園と、でもお食事は豪華という名のやや消化不良になりそうなものばかりが並ぶ状況下で、ネッドとヴェリティは歴史を戻せるのか!?
笑いながらも絶対一緒にミスターCを探してしまうことは間違いありません。


☆ジェローム K.ジェロームの「ボートの三人男」へのオマージュでもあります。


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