シシリーは消えた

Cicely Disappears

アントニー・バークリー
Anthony Berkeley

原書房
おすすめ本
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2005/7/18

資産家のレディ・スーザン・ケアリーの家で親しい者たちが集まっての夕食会が開かれた。そこで、レディ・スーザンの甥のフレディーの提案によって降霊会をすることになる。その最中、若い女性シシリーが消えてしまった。会が終わってもシシリーは見つからない。彼女を可愛がっていたレディ・スーザンは言葉にはそれほど出さないものの、心配が募る。その場に居合わせたスティーヴは、持ち前の好奇心を発揮して、招待客のポーリーンと一緒ににわか探偵を始めることになる・・・。


アントニー・バークリー、別名フランシス・アイルズ、さらに別名A.B.コックス(『プリーストリー氏の問題』の著者)が、彼本来の力を発揮したミステリーです。

とにかく冒頭から面白いのです。遺産で悠々自適の生活をしていた若きスティーヴン・マンロー氏が、財産を使い果たして自活の必要に迫られるのです。そして彼が選んだ仕事は、何と従僕。その事実を、自らの従僕として長年仕えてくれたブリッジャーに打ち明けるのです。その時のブリッジャーの対応の面白さ。マンローとブリッジャーは、長いつきあいで何と先の大戦でも共に戦った仲。というよりは、将校として従軍したスティーヴにブリッジャーが従卒としてお供したというところでしょうか。共に助け合うというよりは、ブリッジャーにスティーヴがおもっいっきり助けられながら歩んできた生活も今日が最後か、と思いきや、全てお見通しだったブリッジャーはスティーヴが雇われるレディ・スーザンの邸宅に庭師として住み込むことを既に決めていたのでした。かくして、元有閑青年紳士の従僕生活が始まるわけです。

雇われたばかりのレディ・スーザンの屋敷では早速夕食会が開かれます。こんな田舎には、誰も知り合いも来ないだろうというスティーヴの計算は見事に外れ、お客としてやってきたのは、スティーヴが思いを寄せるポーリーン!そして、パブリックスクールでの学友でありレディ・スーザンの甥であるフレディー。最も見られたくなかった姿を知り合いに見られたスティーヴですが、プロとしてあくまで仕事に集中する・・・筈だったのが、突如降霊会への参加を頼まれて事件に巻き込まれていくわけです。

とにかく面白いのがこの設定でしょう。仕事をしなければならなくなったからといって、何の経験もない従僕の仕事に突如飛び込むスティーヴもスティーヴ。それについていくブリッジャーもブリッジャー。長年の友人が、つまり自分と同階級(これってイギリスでは重要ですよね)の人間が突然従僕として目の前に現れたことによる周囲の人間たちのとんちんかんなとまどい。などなど、階級社会イギリスをちょっと茶化しているのかしら?と思えるような展開に思わず笑ってしまいます。そして、ブリッジャー。この人が頼りになって、まさしく一家に一人いて欲しいような人物なんですね。

愛するポーリーンは、何と婚約者と目の前に現れるし、従僕の筈の自分にフレディーはやたら仲間入りを迫るし、何かと混乱の最中にいるスティーヴは、さらに若き娘の失踪事件に巻き込まれていくわけです。あくまでこれはミステリーなんだけれど、ユーモアがかなり効いていて、スティーヴと彼を取り巻く人間模様にかなりウェイトが置かれているところも面白さの一因でしょう。クリスティはじめ、あの頃のイギリスミステリーが好きな人にはおすすめです。


☆マンロー&ブリッジャー探偵事務所を作ると良いのに。


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