ブリットーマリはただいま幸せ

Britt-Mari lattar sitt hjarta

アストリッド・リンドグレーン
Astrid Lindgren

徳間書店
おすすめ本
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2003/10/19

スウェーデンの小さな町スモースタッドに住むブリットーマリ・ハーグストレムは15歳の夢見る女の子。母親からタイプライターをもらったのを機に、ストックホルムに住む女の子カイサと文通を始める。ブリットーマリは大家族の中で起こる日々の暮らしを、カイサにあてて綴る・・・。


ハーグストレム家は大家族。学校の先生をしているお父さんに、おおらかなお母さん、しっかり者の長女のマイケンに、いたずら者の弟スバンテ、小さい弟と妹にお手伝いさんのアリーダ。次女のブリットーマリは15歳の青春のただ中にいて、友人問題で悩みもすれば気になる男の子もいるごく普通の女の子です。ただ、夢多くて嫌なことは嫌とはっきり言う芯の通った子でもあります。そんなブリットーマリがやっと手に入れたペンフレンドのカイサは大都市ストックホルムの女の子。新しい何でも話せる友を得たブリットーマリは、自分の日々の生活や悩みをカイサに書き送るのです。

ペンフレンドとは温かく懐かしさを持った言葉ですね。私もペンフレンドを持っていた時期がありました。日々の何ということもない出来事やその時の思い、読んだ本や見た映画について何気なく綴る手紙の心地よさ。その人が喜んでくれるかも?と思われるようなレターセットや、切手を選ぶのもまた楽しかったものです。メールが普及してしまった今、もはや死語に近いかもしれないペンフレンドですが、その懐かしさを存分に感じさせてくれる小説でした。

ブリットーマリはとにかく本が好きで、本がなければ生きてはいけないという女の子。どんなプレゼントより本を貰うのが一番というだけあって、書くことも大好きです。そんな彼女が母親から古いタイプライターを貰ったためにタイプを使ってみたくて仕方なくなり、運良くペンフレンドを求める女の子がいた・・・。手に入れたタイプライターをとにかく使ってみたい!それも手紙で同年代の女の子と文通出来るなら最高でしょう。その気持ち、かつて少女だった者として良くわかります。ブリットーマリの周辺には特に変わった出来事が起こるわけではありませんが、個性的な家族に囲まれての生活ですからそこに彼女の独特の描写が加われば面白い読み物になろうというもの。いかにも教育者的なお父さんや、何とも大らか極まりないお母さん、お母さんの代わりに家事を切り盛りするしっかり者の長女マイケンに、ブリットーマリの大の仲良しだけれどいたずら者でいつも笑いを振りまいてくれるすぐ下の弟のスバンテなど、面白い登場人物には事欠きません。そして、学校でも友達同士のちょっとした諍いや気になる男の子とのちょっとしたあれこれや・・・まことに青春とは忙しいものです。

リンドグレーンといえば、児童文学の大家として今や説明は必要ないでしょう。この作品は彼女のデビュー作です。時は1944年、某出版社が募集した少女向け懸賞小説に応募して2位に輝いた作品です。対象が10歳から15歳ぐらいの少女向けだったこともあって、他の彼女の作品とは一風変わった感じがあることは確か。ファンタジーでもなく、いたずらも生活もまあ常識の範囲内(笑)。カイサへの手紙の形を取っているところもいかにも少女向けですし、ブリットーマリの夢見る少女ぶりもリンドグレーンというよりは寧ろ「赤毛のアン」の世界をちょっと感じさせるところもあります。この作風の違いにとまどわれる方もいるかもしれませんが、私にはなかなか新鮮で心地よいものでした。
この作品の成功でリンドグレーンは作家への道を順風満帆に歩み始めるかと思いきや、そうはいかなかったようで、45年にまた懸賞小説に「長くつ下のピッピ」(他の出版社に送ったが送り返されてきた!)を送って一等賞!今度こそ作家への道を一筋・・・と思いきや、46年に少年向きの懸賞小説募集に「名探偵カッレくん」を送り再び一等賞。作家リンドグレーン誕生までには三度の懸賞小説入賞があったなんて、知りませんでした。こんな苦労話を聞くとリンドグレーンほどの人でも身近に感じてしまうのでした。


☆お母さんの誕生日に、本人のリクエストで家族やお客さんが仮装して現れるところが面白いです。歴史上か本の登場人物に扮するというのも面白い。私なら何になるか考えてしまいました。うーん、茶色の膨らんだ袖のドレスなんて良いんですけれどね(笑)。


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