初恋の道
Marcello's Date

マーク・デイビッド・ハットウッド
Mark David Hatwood

小学館
おすすめ本
(C)2001〜 2006 Paonyan?.
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2006/2/18

時は戦後しばらくしてから。場所はイタリアのとある海辺の村。ここにはちょっとした風習があった。女の子は16歳の誕生日を迎えると初デートが許される。しかし、その相手を決めるのは父親。男の子たちは、初デートを射止めるためにそれぞれ贈り物を持って家を訪問する。そして、その中から娘のデート相手を父親が決めるというわけ。村で一番の美少女エレナ・ガンボチーニもまもなく16歳の誕生日を迎えようとしていた。貧しい漁師の息子マルチェロ・ロメロはエレナに夢中で何とか彼女とデートしたいと思っていた。でも、高価なプレゼントを買うお金はない。そこで、エレナの父親を口説き落とせるプレゼントを持っていこうと、大奮闘を始める・・・。


娘の初デートの相手は父親が決める、という何とも前時代的な風習のもとに繰り広げられる珍騒動を面白おかしく、でもホロリと描いた爽やかな作品です。主人公のマルチェロは、文才溢れる少年で、エレナへの恋心をいつも詩に綴っています。まるでストーカーばりに、エレナの家の前で詩作に耽っているうちに、エレナの父親の心を掴む贈り物を見つけだすのです。早速その交渉に乗り出しますが、敵もさるもの、ただでくれるわけはありません。相手が出した交換条件を果たすために、マルチェロは奔走し、やがて気が付けば一日中村の中を走り回っていることになってしまうのです。おまけに、マルチェロは大学の奨学金を申請するための論文をその日中に執筆しなくてはいけなくて、学校の名誉のためにもマルチェロに奨学金を受けさせようと躍起になっているセリナス校長に追いかけ回され大変なことに。マルチェロを助けるために学校を抜け出してきた親友のリカルド、ティト、パオロは、さらに騒ぎを加速させ、恋敵のお金持ちの息子アルマンドは何かと邪魔します。もうしっちゃかめっちゃかの状態で、マルチェロはとにかく村を駆け回るのです。

いつも何気ない振りを装いながら、そっと見ていたあの人。それが初恋のイメージでしょうか。マルチェロにとって、まさしくエレナはそんな相手。箱入り娘で、二人きりで話をするなんて夢のまた夢。とにかく、エレナの父親に気に入られるしかない。そんな一心で、大学進学をすっかり忘れて、学校もさぼり、友達も先生も父親も巻き込んで、マルチェロはかけずり回ります。でも、知らない間に彼の行為は沢山の人たちに影響を及ぼしていくのです。最後の‘そこ’がジーンと来ます。みんなが初恋と聞いただけで、胸をジーンとさせ、何となく応援してしまうところが、人生を謳歌するイタリア的。でも、誰一人ただのお人好しがいないところもとっても現実的(笑)。

マルチェロの気弱な猪突猛進キャラクターも良いですし、親友で後方応援部隊を結成するリカルドたちの奮闘ぶりもちょっとずれているけれど、楽しい。妻に逃げられた父親が、怒りながらもマルチェロの気持ちを理解してくれるところにもジーンと来ますし、リキュールづくりのシスターズが、どこまでもどこまでも若き日の思い出に浸り始めるところも楽し。授業を放ってマルチェロを追いかける校長先生もどこか笑えますし、どのキャラクターも生き生きしていて、本当に生きている!という感じがするんですね。イタリアの海辺の明るい陽射しをを浴びて、辛いことも悲しいことも、海のさざなみと時の経過に流して、人生を生きている。そんな人々の人生模様が実に楽しい話です。

読んでいてとてもハッピーな気持ちになれる書であります。恋も友情も、小さな村ならではのちょっとした喧噪も、人生のある地点に置いてきてしまった初恋の思い出も、何もかもひっくるめて、思いっきり笑って、ちょっぴり泣きましょう。


☆論文だけは先に書いて提出してから、デートに走るように。by指導教官


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