スラッシュグリーンのたたかい
Battles at Thrush Green

ミス・リード
Miss Read

日向房
おすすめ本
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2002/10/13

イギリス南西部コッツウォルズ地方にあるスラッシュグリーン村。小さなこの村では、いつも変わらぬ生活が営まれていたが、最近村の人々の間に軋轢が生じてきた。発端は荒れ果てていた教会墓地の改善案が発案されたことだった・・・。


この作品は「スラッシュグリーンからの風」の続編にあたります。しかし、特に連続物というわけでもないので個別にも十分楽しめる内容です。私はむしろ、若い女性の私生活を詮索する感じの強かった前作よりこちらの方が素直に楽しめました。それに、こちらの方がより村の人々の強烈な個性が出ているように思います。

スラッシュグリーンは小さな村です。住んでいる人々はほとんどが長い知り合いと言って良いでしょう。特に悪いことも起きずごく普通の日常が流れていく平和的な村で突如村の人々たちの間に軋轢が起こるというのがこの本の概要です。それも原因は村の墓地の改善計画。当然のように牧師さんたちを巻き込んで、やんやの議論が交わされるわけです。

村に吹き込んだ風はこれだけではありません。スラッシュグリーンの変人第1号と言われるドティが、親類からの遺贈品としてもらい受けたのが何と自動車。ドティは一応免許を持っているものの、その運転ぶりときたら・・・。超のろのろ運転でドティの後には延々と車の列が出来ている始末です。しかし、そんなことを気にするドティではありません。ちょっととんちんかんではあっても、毅然と静かにドライブを愉しむ彼女にある日災難が降りかかります・・・。このドティと自動車のエピソードは、この話中一番好きですね。ドティは天下の変わり者で服装は勿論他のことにも全く無頓着なんですが、毅然としたプライドの高い女性で、何故か憎めないのです。

村で長い間病人たちを見てきたドクター・ベイリーの最期の姿には胸が詰まります。残された妻ウィニーの姿はなおさら胸を締め付けずにはいられません。逝く方も勿論辛い。でも、1人残された者の淋しさはそれ以上かもしれません。ここは涙が出ます。

スラッシュグリーンは、ミス・リードの他の小説に出てくるフェアウェーカー村と似た感じなのですが、住民層が少し違う感じもします。例えばハロルド・シュースミスは主役級でインテリ。物の見方も第三者的です。

ミス・リードらしい学校の先生たちのエピソードも、細かいことと言ってしまえばそれまでですが、読んでいるうちに凄く納得出来てしまうのです。人々の小さな心の綾を逃さないミス・リードならではの視点です。フェアウェーカー村の人たちほどの親しみはまだ湧かないものの、個性的という面では決して負けていない登場人物のオンパレードを楽しんで下さい。


☆最初に出てきたキノコ、食べて大丈夫だったのかしら?




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