スキッピング・クリスマス
Skipping Christmas

ジョン・グリシャム
John Grisham

小学館
おすすめ本
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2002/12/23

中流の住宅街ヘムロック・ストリートに住む会計士のルーサー・クランクは、クリスマスの喧噪に嫌気がさしていた。昨年、クランク家が使ったクリスマス関係の経費は何と6100ドル!派手やかなクリスマスツリーにイルミネーション、会社のクリスマスパーティにそのためのドレス代、家で開く豪華なパーティ費用、クリスマスカード、そしておびただしいプレゼントの山。寄附目的の様々な出費もあった。一人娘のブレアが、平和部隊の一員として一年間の予定でペルーに旅立ち、夫婦2人となった今年のクリスマスをルーサーはことごとくボイコットすることを決意する。そして、その分で浮いたお金で妻のノーラと共に豪華客船でカリブ海クルーズに出かけ、命の洗濯をするのだ。しかし、そんなルーサーの一大決心がヘムロックの人々に大きな騒ぎを巻き起こすことになる・・・。


法廷サスペンスの第一人者。書けば(いや実は書く前から)すぐ映画化にまっしぐらという超売れっ子作家ジョン・グリシャムのこれはちょっと珍しいクリスマス物語です。それもかなりシニカルな話。今までのクリスマス=心温まるお話、という路線からはちょっと外れて、実際のクリスマスの大変さを余すところなく描いていて、アメリカ人の大変さを赤裸々に綴っているのが面白いところです。

クリスマスというと、大きなツリーにデコレーション、家々を飾るイルミネーションなど華やかな場面がすぐ眼に浮かびます。まして、ヘムロック・ストリートは裕福な人々が住む住宅街。人々はクリスマス前から趣向を凝らして念入りに家々の飾り付けをするわけです。おまけにヘムロック・ストリートにはクリスマス前から雪だるまの(実はプラスチック製)フロスティを家々の屋根に飾るという風習もあっててんやわんやの大騒動が繰り広げられるのです。またおびただしい数のクリスマスカード、警察、消防署、ボーイスカウトなどが寄附目的で売りつける様々な品々、役に立つのかどうかわからないプレゼントの数々、毎年開くイブの盛大なパーティにかかる費用。それらは去年の計算によるとクランク家では6100ドルかかったというのですから、絶句!こうなると、ただのクリスマスの楽しみとは言っていられません。今年こそはクリスマスを自分たちの慰安に当てたいと決心したクランク夫妻が立てた計画は豪華客船によるカリブ海クルーズ。ゴージャスな10日間の旅にかかる費用は3000ドルちょっとで、いつものクリスマスより大きな節約になるというから驚きです。ところが、このクランク夫妻の決意を周囲が放っておいてはくれません。行きつけのクリスマスカード屋さんからは何度も電話がかかってくるし、ボーイスカウトは毎年売っているツリーを買ってもらえないと知って呆然。毎年パーティに招かれていた人々は、今年はどこへ行けばいいの!?と言い出す始末。おまけに、屋根に雪だるまのフロスティを飾らないし、家の飾り付けをしないことで近所からは冷たい目で見られる始末・・・。

自由の国であるアメリカで、ただクリスマスを祝って恒例の行事をしないということだけで、今まで尊敬されていた社会的地位もあるクランク夫妻は、完全に変人のレッテルを貼られてのけ者にされてしまうのです。この皮肉!

こうなってくると、華やかなアメリカのクリスマスもちょっと色あせて見えてくるから不思議です。みんなと同じことをするために、アメリカ人は財政的にも肉体的にも精神的にも、どれほどの力を使っているのか、ということを見せつけられる思いです。また、クリスマス精神にのっとった寄附もいくつも重なると馬鹿にならないものです。勿論、経済的に恵まれた家々ですから、それに応えることが当然とされている社会システムも時には重荷かも・・・。クリスマス以外で寄附はするから、という返事をしても誰も納得してくれない。クリスマスだからこそ、さらなる寛容性を強要されるわけです。

さてさて、周囲の様々なプレッシャーをはねのけて、クランク夫妻は無事にカリブ海クルーズに旅立てるのか!?ちょっとスパイスが効いたクリスマスボイコットコメディです。


☆アメリカ人も隣と同じ事をしないと嫌われるということがよーくわかりました。

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