北風のうしろの国
At the Back of the North Wind

ジョージ・マクドナルド
George MacDonald

太平出版社
おすすめ本
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2002/9/1

御者の息子である少年ダイアモンドの元に、ある日北風の精が訪れる。彼女は美しく長い髪をしていて、ダイアモンドは彼女の姿に魅了される。それからも時々彼女は姿を変えてダイアモンドの元に現れるようになる。ある時は可愛い女の子の姿だが、ある時は巨人に姿を変えて長い髪を振り乱して船を沈めたりするのであった。ダイアモンドはついに話に聞く北風のうしろの国に連れて行ってもらう。そこはとても静かで穏やかで美しい国。そこから帰ったダイアモンドは、いつもその国とつながっているような感じを持ち続ける。しかし、人々はそんなダイアモンドを頭のおかしな少年として見るようになっていた。ダイアモンドは病気になった父の代わりに馬車を御し、交差点の掃除をする恵まれない少女を助け、次から次へと善行を施す。しかし、ダイアモンドは一度経験した北風のうしろの国への憧憬を忘れられなかった・・・。


ところはロンドンの貧しい地域。ダイアモンドは自分と同じ名の馬のダイアモンドと共に馬小屋で寝るような生活を送る少年です。でも彼は心優しく働き者。父親が病気になって働けなくなった時、一家の生活を支えるために小さな体で馬車を御して街を走り回ります。また、自分自身が十分過ぎるくらい恵まれない生活を送っているはずなのに、交差点掃除をしている少女ナニーを病気から救い、果ては彼女を自分の家に住まわせてあげます。

そんな心優しいダイアモンドに、優しくしてくれる人もいるのですが、ちょっと頭がおかしいと思いこんで邪険な扱いをする人もまたいたのでした。ダイアモンドに随分助けてもらった筈のナニーでさえ、ダイアモンドのことを馬鹿にしきっています。これは悲しいことでした。

イギリスの児童文学と言えば、やはり中流家庭以上の子供たちを主人公にした作品が目立ちます。しかし、この作品の舞台はスラムと言っていいほど貧しい街です。そんな街で働くしかなく、バカンスにも無縁、見知らぬ地にも無縁の少年を主人公においた話は当時としてはなかなかなかったのではないでしょうか。

食べていくのに身を粉にして働くしかない現実と、北風のうしろの国で見た夢の世界と、その狭間に立って生きたダイアモンドの純真な生き方には感動を覚えずにはいられません。これ以上は触れられませんが、マクドナルドの死生観が見事に現れた一編だと思います。


☆マクドナルドは聖職者、大学教授、作家と幅広い活躍をした人で、その様々な経験から経たであろう思想が随所に見られました。



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