ケルトの白馬
Sun Horse, Moon Horse

ローズマリー・サトクリフ
Rosemary Sutcliff

ほるぷ出版
おすすめ本
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2002/11/16

イケニ族はバークシャーの丘陵地帯で平和な暮らしを営んでいた。族長ティガナンと妻のサバの間には3人の息子がいた。末息子のルブリン・デュは生まれつき肌が褐色で、小さい頃から模様や絵を描く才能に恵まれたちょっと変わった子供だった。5歳の頃、一緒に喧嘩の助太刀をしてもらったことから、ルブリンは幼なじみのダラといつしか永遠の友情に結ばれることになる。2人は他の少年たちと共に少年団に入り、戦士としての訓練を受けることになる。しかし、ルブリンも2人の兄も族長の息子であるにも関わらず父の跡を継ぐことはない。イケニ族は族長の娘の夫となるものが次の族長の座を継ぐことになっているのだ。従ってルブリンの妹テルリの夫となる者こそ次の族長になるのであった。そのテルリの婿選びも終わった頃、イケニ族はアトレバテース族に攻め込まれて決死の戦いを強いられることになった・・・。


イギリス、オックスフォードの街から30キロほど離れたアフィントンという小さな村の近く、緑なす丘陵地帯に巨大な白馬の地上絵があるそうです。特にこの白馬の絵は他の地上絵と違って、動きを感じる力強さと美しさに満ちているとのこと。この絵はどういう由来で描かれたのか?を、サトクリフならではの観点から描き出した歴史ロマンです。

根っからの戦士たちであるイケニ族の族長の息子として生まれたルブリン・デュは、戦士としての訓練も積みますが、本来芸術的なセンスに満ちた青年でした。そのルブリンが、征服せんと押し入ってきたアトレバテース族と戦い、更に生き延びるために交渉し、そして彼の持てる全ての力を発揮してイケニ族の為に尽くす姿を感動的に描きます。小さい頃からルブリンは、絵を描く才能の豊かさを見せつけます。ケルト文化は抽象化された文様を好んだそうで、ルブリンの描く様々な模様もケルト独自の美術を体現したものでしょう。

ルブリンと幼なじみのダラの友情は最後まで胸を打ちます。使命を帯びて孤独に陥るルブリンに最後までダラだけは変わらぬ熱い友情を捧げ続けます。幼い頃から一緒に遊び、少年団でやがてやってくる戦士としての日々のための訓練に身を捧げ、人生のほとんどの時を共に過ごした2人ならではの友情と言えるでしょう。

アトレバテース族の族長クラドックと、ルブリンの心の交流というにはささやかなれど、無視できない2人の間に通じた何かも見逃せません。クラドックはルブリンの芸術がしっかりわかる人なんですね。
短い小説だけに父親のティガナンや母親のサバなどがあまり出てこないのが残念なくらい、この2人ももっと知れば味のある人物だったろうと思わせます。

歴史小説と言えばサトクリフは第一人者。遙か長い時を超えて、人々の息吹と生きた証が生き生きと伝わってくる静かな感動作です。


☆良いところなしの双子のお兄さんが少々可哀想だったかも・・・。

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