たのしい川べ
The Wind in the Willows

ケネス・グレアム
Kenneth Grahame

岩波少年文庫
おすすめ本
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2002/11/9

自分の家の大掃除をしていたモグラは突然全てを投げ捨てて、うららかな天気のもと散歩に出かけます。あちらこちらぶらつくうちに、モグラは川岸に出ました。モグラは生まれてから一度も川というものを見たことがなかったために生きている川の姿に感動します。モグラは川を見つめながら川べに住めたらなあ、という希望を微かに持ち始めます。そんな時、ネズミに出会い意気投合した2匹は一緒に楽しい生活を送ることになります。川辺には他にも色々な生き物がいました。社交嫌いだけれど、とても賢いアナグマ。うぬぼれ屋のヒキガエル。彼らは川岸で静かな生活を送っていましたが、それぞれ思いがけない冒険に巻き込まれることになります・・・。


実はある理由からこの本は長年敬遠してきたのですが、そんな心配は必要なかったと気づきました。もっと幼い頃にこの本に出会っていたら幸せだったろうに、と今は感じます。

地中に住むモグラが意を決して出た散歩は、モグラの生活をすっかり変えてしまいます。出会ったネズミは利口ですが、気の良い性格でモグラはすっかりネズミ宅のお客様に収まってしまいます。ネズミの知り合いであるアナグマやヒキガエルとも知り合いになります。ヒキガエルはとてもお金持ちで豪邸の持ち主。でも、見栄っ張りでうぬぼれが相当鼻につく性格でもあります。アナグマはちょっと取っつくにくさを感じる気むずかしいところがあります。世間では社交嫌いで通っていて、初めて会うのにモグラはおっかなびっくり。でも会ってみればやはりとても気の良い性格なのでした。
このように性格はそれぞれ違ってはいても、基本的には気の良い仲間たちがちょっとしたことから色々な冒険に出会います。
モグラは夜の森にさまよい出たことから恐ろしい体験をします。傑作なのはヒキガエルで、車を盗んだために捕まって投獄されて変装して脱獄して・・・と、スリリングな体験のオンパレード。おまけにヒキガエルが外でそんな冒険を積んでいる間に、豪華な屋敷は大変なことに・・・。

個性豊かな仲間たちが、体は小さくても知恵をふんだんに使って窮地を切り抜けていく様がとてもこぎ見よく感じられます。

ところで、この彼らの住んでいる家はどれも大変に心地よいんですね。モグラが居着いてしまうネズミの家然り。アナグマの家も然り。ゴージャスなヒキガエル屋敷は言うに及ばず。モグラが見捨ててきた我が家でさえ帰ってみればこの上なく居心地の良さを感じるところなのです。どの家も暖かくて、食べ物が豊富にあって、心がホッとするような家なのです。ケネス・グレアムがこのように素敵な家にこだわったのは、淋しい少年時代を過ごしたために居心地の良い家に対する憧れが強かったためではないかと言われています。確かにそうかもしれないと納得できる快適さ。

川べと言えば、どうしても湿気やじめじめした匂いを感じてしまうのですが、この話はそれを感じさせません。ある意味とてもカラリとしていて、でも優しいお話です。


☆洗濯婦人に化けたヒキガエル。いくら小柄とは言っても人間のご婦人と背の高さが一緒というところがいとおかし。


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