Holes

ルイス・サッカー
Louis Sachar

講談社
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2002/9/22

グリーン・レイク・キャンプは砂漠のど真ん中にある少年院。付近には街も何もなく、逃げ出したが最後、砂漠に埋もれて死ぬしかないような場所だった。スタンリー・イェルナッツは、人気プロ野球選手クライド・リヴィングストンが寄付した靴を盗んだ罪でこの少年院に送られてきた。そこでは、仲間たちと共に、来る日も来る日も与えられた日課を朝から晩までこなす日々だった。その日課とは、何と穴掘り。1人1人が大地に大きな穴を掘って、もし何か見つけたらすぐに知らせるのが仕事だった。辛いばかりで何の甲斐もない仕事だったが、サディストの女所長の権力の前には誰も逆らえない。そんな変わらぬ毎日の中で、スタンリーは仲間のゼロと友情を育み始める。しかしある日そのゼロが、所長たちに反抗して脱走してしまう。


舞台は西部劇に出てきそうな大きな砂漠のど真ん中です。完璧に世間から隔絶されたこの地に作られた少年院。某かの過去を持つ少年たちを待っている仕事は毎日の穴掘り。それも半端な大きさの穴ではありません。焼け付く砂漠の気候は過酷で、立っているのがやっとなほどの中をシャベル片手に朝から晩までせっせと穴掘り。それでいてこの穴が何かの役に立つのではないのです。ここに送られてきた新米のスタンリーは訳もわからないまま、この仕事に必死で従事しますが、やがてこの仕事の意味するところがわかってきます。それは「何か」を見つけるためなのだということを。慣れるに従って、うまいやり方も身に付いていき、人間の適応力の凄さを感じさせます。

仲間たちの中にとても穴掘りのうまい少年ゼロがいました。一見無口で無愛想に見えるこのゼロとスタンリーは、ひょんなことから友情を育むことになります。一端芽ばえた友情は、簡単に崩れるものではありませんでした。隔絶された地で、見つけることの出来た信頼出来る人物ほど大事なものはなかったのでしょう。ゼロが鬼所長たちに反抗して脱走した後、心配したスタンリーはゼロの後を追います。しかし、水も食料もなくガンガン照りつける太陽のもと、生き残るのは奇蹟に近い決死のサバイバルだったのです・・・。

このスタンリーの先祖代々から伝わるエピソードが面白いのです。ひいひいおじいさんがかけられた呪いのせいで、いつもいつもまずい時にまずい場所に居合わせるというものです。勿論、本人にとってはたまったものではありません。この呪いはしっかりスタンリーにも作用して、やっぱり彼もいつもいつもまずい時にまずい場所に居合わせることになります。おかげでしなくても良い苦労を背負い込む羽目になります。スタンリーはその自分の運命を半ばあきらめて受け入れるしかない日々です。

サディストの女所長がまたまた強烈なキャラクターです。こんな砂漠のど真ん中の少年院にはちょっとそぐわない比較的若い、見方によっては魅力的な(?)女性なのに、もの凄いサディスト!穴を掘るという訳の解らない日課は彼女の考えから出たものです。一体、彼女は穴から何を期待しているのでしょう?この謎がグイグイ読者を引っ張ります。

挿入される西部開拓時代の話がとても良いです。ケイトは小さな街の女教師。教えることに情熱を傾ける誇り高き女性でした。その彼女と街の人たちのエピソード。この現代と過去との交錯が、更に謎を深めてくれます。小道具の使い方や、伏線もとても効いています。これらの細い糸を紡ぎ合わせて最後に太いロープとする手法はうまい!と唸らせます。


☆「あなたにキッスのケイト・バーロウ」は最高のネーミングですね。

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