賢者の贈りもの
The Gift of the Magi

O・ヘンリ
O.Henry

新潮文庫 「O・ヘンリ短編集2」に収録
おすすめ本
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2002/12/1

ジェームズ・ディリンガム・ヤングと妻のデラは、週8ドルのアパートで貧しい生活を送っていた。クリスマスイブを前にして、デラは手元の1ドル87セントを見て、泣き出す始末。愛する夫ジェームズにこれでどんなプレゼントを買えると言うのだろう。何ヶ月もの間節約に節約を重ねてきたのに、貯まったのはたったこれだけの金額だった。デラには是非ジェームズにプレゼントしたいものがあった。ジェームズが自慢にしているたった一つの宝物、父から譲り受けた金時計に似合うプラチナの鎖だった。デラは今宵を素晴らしいクリスマスにすべく、涙を拭いて街に出た・・・。


あまりに有名なこの作品。ネタバレするまでもなく皆さんご存じのことと思います。クリスマスには手を替え、品を替え、話のベースとして使われている作品ですよね。
貧しい夫婦がたった一夜のクリスマスの夢の為にそれぞれ自らを犠牲にしても、愛する人にプレゼントを贈りたいというその思いが、時代を超えて人々の胸を打ちます。貧しいのだから、身の丈にあったクリスマスを送るしかないのに、という思いも胸をよぎりますが、貧しいからこそクリスマスだけは心から楽しいものに・・・という思いもまた強いのでしょう。

冒頭、1ドル87セントを目の前にしてわあわあ泣くデラの姿があります。

『そうしているうちに、人生は「むせび泣き」と「すすり泣き」と「ほほえみ」とで成り立っていて、わけても「すすり泣く」ことが一番多いのだ、ということがわかってきた』

というフレーズがあってひどく胸を打たれてしまいました。わあわあ泣く場面はそんなに頻繁ではないかもしれません。ほほえみは意図的なものはあったとしても、心から微笑むことが出来る場面がいっぱいある人はとても幸せな人生と言えるでしょう。そう、人生の中では、大泣きしないまでも涙を一滴、または心の中で泣く「すすり泣き」が実は一番多いような気がします。これは、人生の機微を味わい尽くしたO・ヘンリーならではの視点ですね。

O・ヘンリーは子供の時から大好きな作家でした。今でも彼は短編作家として世界でも有数だと思っています。人情話が多くて、今となっては時代遅れの感が強すぎる作家の一人になってしまったかもしれません。でも、人間の根本はどんなに時代が移ってもそんなに変わるものではない、と信じたいものです。人生の機微を絶妙な筆致で綴った彼の短編には、今でも心惹かれます。彼がこんな素晴らしい作品の数々を書けたのも、彼自身が積み重ねた苦労の賜と言えるでしょう。

この「賢者の贈りもの」も物があふれる現代社会で理解しろというのは無理かもしれません。それでも、いつの時代にも貧しくても愛を忘れない人たちの姿があったことを知るのは一つの心の安らぎです。


☆長い綺麗な髪の活用法としては、やっぱりこの話と「若草物語」のジョーが双璧ですね。
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