どろぼうの神さま
Herr Der Diebe

コルネーリア・フンケ
Cornelia Funke

WAVE出版
おすすめ本
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2002/10/6

水の都ヴェネツィア。この美しい街を、母を亡くしてから引き取られたエスター伯母の元を逃げ出した12歳のプロスパーと5歳のボーの兄弟がさすらっていた。彼らは孤児たちだけで暮らしている仲間に受け入れられ、一緒に暮らすようになる。仲間はしっかり者の女の子のヴェスペ、男の子たちのリッチオとモスカ。彼らのボスは「どろぼうの神さま」と呼ばれる少年スキピオだった。彼らは街の廃館された映画館に住んでいたが、スキピオはそこでは暮らさず時々食料などを持って現れるのだった。一方、少年たちに逃げられたエスター伯母は、探偵のヴィクトール・ゲッツに兄弟を捜すことを依頼する。かくして、ゲッツは兄弟探しに奔走することに・・・。


プロスパーとボーが逃走の地にヴェネチアを選んだのは、亡くなった母がいつもヴェネチアの話をしていたからです。彼らにとっては、話を聞くだけではあっても親しみを感じる地になっていたのです。しかし、その母が亡くなって伯母の元に引き取られますが、伯母はプロスパーを寄宿舎にやろうとしているために兄弟は離ればなれになってしまいます。それに、伯母は行儀の良い子供を欲していてプロスパーたちはその希望に添えそうもありません。かくして彼らの逃走生活は始まります。そんな彼らに救いの手をさしのべてくれたのが、同じ孤児仲間たちでした。その仲間のボス、「どろぼうの神さま」を名乗るスキピオは謎の多い少年です。踵の高いブーツを履いて、大人のように装っていますが、実はプロスパーとそんなに変わらない年の少年なのでした。

子供たちは、皆心に傷と重荷を抱えています。それは万能に見えるスキピオにしても同じでした。そんな彼らが、仲間意識に支えられてひたすら助け合う姿に心を打たれます。そして、あくまで弟を守ろうとするプロスパーの兄としての愛にも。

少年たちに、やがて大きな話を持ちかけられます。それは不思議な力を持つメリーゴーランドの羽を手に入れる仕事。壊れたメリーゴーランドを直すことによってそのメリーゴーランドは恐るべき力を発するのです・・・。

プロスパー兄弟を捜し回るうちに、いつしか兄弟に同情を感じるようになる探偵のヴィクトールが良いですね。子供たちのためにとんでもない目に遭いながらも、彼らを憎めないヴィクトール。そのうち、商売そっちのけで・・・。ヴィクトールは間違いなく子供の心を持った大人と言えるでしょう。しかし、肝心の子供たちは子供である無力さゆえに大人になることを願っているのです。プロスパーは大人になれば弟を守ってやれるという理由で。そして、スキピオは複雑な家庭の事情のために。子供でいることは、人生で最も楽しい時期のはずなのですが、その時をそれらしく過ごせない子供たちの悲哀が胸を打ちます。


☆ポイントとなるのがメリーゴーランドというのが素敵ですね。


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