よみがえれ白いライオン
THE BUTTERFLY LION

マイケル・モーパーゴ
Michael Morpurgo

評論社
おすすめ本
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2002/8/11

イギリスの全寮制の学校に通っていた「ぼく」は、ある日嫌なことだらけの学校から脱走した。雨の中をさまよううちに、「ぼく」は門の上に大きなライオンの石像が載っている古い屋敷に紛れ込みそこに暮らすおばあさんに歓待される。話しながら、「ぼく」は家の窓から見える丘の斜面に太陽の光を受けて青く輝くライオンの姿を見つける。おばあさんは、そのライオンのいきさつを「ぼく」に語り始める・・・。ずっと昔、バーティという少年が南アフリカで育っていた。彼が安全なようにと両親は家の周りに柵を巡らせ、彼はそこから出ることを許されなかった。しかし、ある日父親が雌ライオンを仕留めたことを知り、バーティはいてもたってもいられなくなって柵の外に出る。その雌ライオンと一緒にいた白い子ライオンのことが気になって仕方がなかったのだ。無事に白い子ライオンを連れ帰ったバーティは、そのライオンを育てることを許される。バーティとライオンは、兄弟であり無二の親友になった。しかし月日の流れは無慈悲だった。バーティは、イギリスの全寮制の学校に送られることになり、ライオンはフランス人の経営するサーカスに売られることになったのだ・・・。


短いですが、とても心を打つ話でした。アフリカのサバンナで育つ孤独な少年が見つけた生涯の友、白いライオン。これはその少年バーディと「白い王子」と呼ばれたライオンの数奇な運命と友情の物語です。サバンナの話って、そもそも弱くてすぐ手が伸びてしまう傾向が私にはあります(笑)。まして、少年が友達にするのは白いライオン。でも、彼はサーカスにライオンを売り飛ばすのが嫌で野生に返そうとします。どこかで聞いたような話。そう「野生のエルザ」のパターンそのままです。これは野生動物を人間が育ててしまった場合に辿る宿命なのでしょうね。

やがてイギリスの全寮制寄宿学校にやってきたバーディは、やはり寮を抜け出して近くの屋敷に住むやはり孤独な少女ミリーと友達になります。二人の友情は密かに何年も続きます。しかし、戦争が勃発してバーディは前線へ。音信が何年も途絶えていてもいられなくなったミリーは看護婦としてフランスに行き、バーディの消息を求めます。ミリーが出会ったものは・・・。

舞台はアフリカの広大な大地から、閉鎖的なイギリスの階級社会へ、そして遂に戦争の前線での塹壕生活。フランスの田舎町・・・この次から次へと変わる舞台設定の一つ一つがリアルです。戦争という悲しい運命に翻弄されるバーディとミリー、そしてライオン。サーカスの動物たちもまた戦争の大いなる犠牲者でした。

前半は「野生のエルザ」、半ばは「秘密の花園(花園なんて出てこないけれど)、後半は「武器よさらば」というイメージで、読者の感性を揺さぶります。子供時代から愛を育み続けたミリーとバーディ。そして、兄弟のような絆で結ばれ続けたバーディと白いライオン。彼らの姿に、一筋の涙をこらえることが出来ません。今年の課題図書に選ばれているそうですが、なかなか素敵な選定だな、とこれを選んだ人たちにちょっと拍手を送りたい気分です。

老人になったミリーの何とも切ない気持ちを、若い人たちがどれほど理解してくれるか定かではありませんが、こういう愛もあったのだ、と。そして、どんな愛をも引き裂く戦争の姿にも思いをはせて欲しいと思います。


☆白いライオンというと日本人なら思い起こすのは「レオ」ですよね。「ジャングル大帝」。♪ああ〜ああ〜響くこだま〜ああ〜ああ〜レオの叫び〜

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