みじかい3つのクリスマス物語
The Quiet Little Woman

ルイザ・メイ・オルコット
Louisa May Alcott

小さな出版社
おすすめ本
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2002/12/8

孤児院で暮らすパティが、いつか自分を必要としてくれて愛してくれる家族を求める切ない話、「もの静かな小さな娘」。貧乏でクリスマスプレゼントをもらえないティリーが、弱った小鳥を助ける「ティリーのクリスマス」。クリスマスに起こった奇跡、馬のローザが自分の身の上を話す「ローザの物語」。オルコットが紡ぐ3つの短編を集めたクリスマスの心温まる物語。


「もの静かな小さな娘」のパティは、ずっと孤児院で暮らしてきた孤児。仲間たちが養子として、あるいは働き手として色々な家に引き取られて行くのを見ながら、その小さな心を孤独感でいっぱいにしている少女です。そんなパティに転機が訪れます。ある日出会ったジェーンおばさんとの縁故で、ある家に手伝いとして引き取られることになるのです。しかし、その生活はパティが憧れた家族との愛に満ちた生活とは全く違うものでした・・・。それでも、泣き言一つ言わないパティはまさしく「小さな貴婦人」。学校にも行っていないし、洗練されているわけでもありませんが、明らかに崇高な心と謙虚さを併せ持った少女でした。でも、そんなパティの心の中にどんな思いが潜んでいるのか誰にも、いえ正確にはただ一人を除いて誰にもわからなかったのです。

「ティリーのクリスマス」は小編です。友人たちがクリスマスには何をもらう、と言って浮かれている中、貧しい家のティリーは何ももらえないことがわかっています。でも、傷ついた小さな鳥を救って愛を持って世話する優しい娘でした。そんな彼女に訪れたクリスマスは・・・。

「ローザの物語」はオルコット版の「黒馬物語」という趣です。クリスマスには何らかの奇跡が起こるといいますが、馬のローザに起こった奇跡はひとときの間人間と話が出来ることになったことです。そこで、ローザは自分が今までどんな生活を送ってきたかを語ります。名馬の血を引くローザは、輝かしい生活と愛される日々を送ってきましたが、愛する人たちの死のたびに他の飼い主に売り渡される生活。その中にはローザを愛してくれる人も多かったのですが、文字通り馬車馬のように働かされる厳しい生活もありました。そんな辛苦を舐めたローザが幸せな生活を懇願する姿には胸が詰まります。


ルイザ・メイ・オルコットは理想主義的な教育理論を掲げる父の元に生まれ、その高邁な精神を受け継ぎました。しかし、オルコット家の暮らしはいつも火の車。理想と現実とのギャップは激しかったのです。貧しさをいやというほど体験したルイザ・メイが描く現実の貧しさは、ひしひしとした実感を持って迫ってきます。生活のために彼女は三文小説ともいうべき大衆小説も数々書きました。そうやって家族の生活を支え、やがて「若草物語」で人気作家となり経済的安定をもたらすことが出来ました。そんな彼女のバックボーンを知っていると、一つ一つの物語が彼女の人生の小さな一こま一こまに重なっている気がします。

この小説集は、子供のための雑誌に掲載されたもので、長く彼女の作品群からは忘れ去られていたものです。はっきり言って、現代向けとは言いかねますが、オルコットのファンの方なら何だかんだ言っても彼女の書いたあの話、この話を思い出しながら読んで頂けると思います。


☆この短編集を発見した編集者は、ローラ・インガルス・ワイルダーシリーズの「オウザークの小さな家」を手がけたことで知られる人です。やっぱりローラとオルコット、どこかで結びついてしまうんですね。by両者のファン

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