魔法使いはだれだ
WITCH WEEK

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Diana Wynne Jones


徳間書店
おすすめ本
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2002/1/14

ラーウッド寄宿学校の2年Y組で「このクラスに魔法使いがいる」と書かれたメモが見つかった。時は現代だが、魔法は異端視され魔法使いだとわかったら、火あぶりにされる恐ろしい決まりがあった。おまけにこのクラスには親や親戚が魔法使いだとわかって処刑されるなどの問題を抱えた子どもたちが集まっていた。早速、みんな魔法使い捜しに夢中になる。まず、やり玉に挙がったのは大魔女を祖先に持つクラスから浮いた存在の女の子ナン・ピルグリムと、陰険でやはり嫌われ者のチャールズ・モーガンだった。そして、学校では奇怪な事件が続出する。音楽の時間に大量の鳥が飛び込んできたり、学校中の靴が講堂に集まってしまったり。そして、追い打ちをかけるように副校長の息子でクラス仲間からいじめられていたブライアン・ウェントワースが「魔法使いにさらわれる」という書き置きを残して、いなくなってしまった!とうとう警察やついには異端審問官も登場する大騒ぎに。果たして誰が魔法使いなのか。危機にさらされた魔法使いが唱えた言葉で登場したのは、粋でおしゃれな大魔法使いクレストマンシーだった。


魔法使い、寄宿学校というと、今の時代にまず思い浮かぶ作品があるでしょう。その2番煎じだとはくれぐれもお考えにならないように。こちらは82年に出版された本で、作者は「魔法ファンタジーの第一人者」の声の高い人なのです。そんな人の作品が、このファンタジーブームのおかげで、陽の目を見たのは皮肉としか言いようがありませんが。

時は現代で、登場する子たちも典型的な現代っ子なのですが、一方では中世のような魔女狩りがまかり通っている世界でもあります。異端審問官があって、魔法使いとわかると火あぶりにされるという、文化と野蛮さが表裏一体になった世界。そんな世界に「魔法使いがいる」という密告書が一つのクラスという閉鎖社会に舞い降りたのですから、大騒ぎになるのは当たり前です。そして、こういう時に真っ先に疑いの目で見られるのはクラスのはみ出し者なんですね。疑いの目を向ける先頭に立つのは、優等生だったりおすましやの鼻持ちならない人気者であるところも普遍の展開です。疑いをかけられるナンやチャールズ以下、いじめらっれっ子のブライアンやどことなく得体の知れないニラバムやエステル。いじめっ子側に立つサイモンやダンやテレサなど、主役の子どもたちは大変個性豊かで素晴らしく生き生きしています。みんなどこかすねに傷をもっている感じで、正義感の塊や良い子の典型などがただの一人もいないところも、また良いですね(笑)。その方がとても現実的に感じてしまいます。それに魔法使いだと思える子を敢えて密告しないのは、「みすみす金の卵を産むガチョウを渡してなるものか」という思いっきり利己的な理由からだったりするところも、笑えて妙にリアル。実際に、その子に「何々して〜」「私を○○にして〜」と注文の嵐が舞い込むのも笑えます。

密告書の中身はどうやら本物だったようで、次々と学校で奇怪な出来事が続くようになります。その奇怪な出来事の連続で一番面白かったのは、「サイモンの言うことはすべて本物になる」という魔法ですね。優等生サイモンが魔法にかけられてしまって、彼の口にしたことは全て本物になってしまうというわけです。それも彼がその気で口にしたことだけが本物になるのではなくて、授業中先生に「氷河期にはどうなるか」と尋ねられて、「とても寒くなります」と答えただけで教室が凍り出す様には爆笑。これは有名な「サイモンは言った」という遊びに引っかけているだけに、欧米ではすごく受けたのではないかと思います。

ブライアンの突然の失踪を機に、追いつめられた魔法使いは大魔法使いクレストマンシーを呼び出す呪文を唱え、彼の助力を受けることになります。このクレストマンシー、すごくおしゃれで粋なハンサムさん(笑)。切羽詰まった状況にありながら、彼の素敵さにポーッとなってしまう女の子が現れるなど、笑わせてくれます。それに物知りなようでいて、歴史に全く無知な謎の人。でも、姿を見えなくする魔法(もっとも彼より10m以内にいれば)など、魔法の術にはちゃんと長けている人です。ハンサムな魔法使いって、今までの作品でもあまり思い当たらないから、その点彼の出現は画期的ですね(笑)。

さてさて、魔法使いは誰なのか。この謎にはあっと驚く展開が用意されていますから、お楽しみに。歴史の勉強にもなりそうな話です。


☆魔法は堂々と使うより、どこかコソコソと隠れて使う方がミステリアスで面白いという考えはもう古いのかしら?


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