時の旅人
A TRAVELLER IN TIME

アリソン・アトリー
ALISON UTTLEY

岩波少年文庫
おすすめ本
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2001/8/12

想像力豊かな少女ペネロピーは病気療養のために、母方のバーナバスおじさんとティッシーおばさんが住むサッカーズ農場に姉や兄と行くことになります。ある日間違えたドアを開けたペネロピーは昔の衣裳を身につけた貴婦人達を目にします。それを機に、ペネロピーは扉の向こうの世界と現実の世界を行ったり来たりすることになります。扉の向こうは16世紀、エリザベス女王時代の世界でした。その頃、サッカーズ農場は荘園領主バビントンの屋敷でした。その世界には別の「テッィシーおばさん」がいて、ペネロピーはおばさんの親戚の娘としてそこに滞在することになります。領主アンソニーはエリザベス女王に幽閉されているスコットランドの女王メアリー・スチュアートに絶対の忠誠を誓っていました。女王への思いは見ていて痛々しいほどでした。アンソニーの美しい妻は、夫を愛し愛されていてもどこか淋しそう。そして、ペネロピーは領主アンソニーの弟フランシスとも親しくなります。アンソニーと仲間達は、近くの屋敷に幽閉されたメアリー女王を救うべく、その屋敷とサッカーズの間にトンネルを掘り始めます。その一部始終を知るペネロピーもメアリー女王救出計画に巻き込まれていきます・・・。

扉を開いたらそこは16世紀の荘園・・・婦人達は美しいドレスに身を包み、草花は美しく、紳士達はあくまで紳士然としている世界。いかにも女の子が憧れそうなロマンティックな世界なのですが、この物語はそこに血塗られた歴史を盛り込んでサスペンスフルに仕立ててあります。
エリザベス女王とメアリー・スチュアートとの確執は色々見聞しますが、ペネロピーが飛び込んだのはまさにその渦中。おまけに領主のアンソニーは熱烈なメアリー・スチュアート派で、女王のためなら例え火の中水の中。目の前の物が見えなくなる破滅タイプです。歴史を知っているペネロピーは、アンソニーの試みが報いられないばかりか、身の破滅になることを心配します。でも、ペネロピーにも歴史は変えられない。

ペネロピーは16世紀の世界と、現実の世界を自在に行き来します。最初は扉を開けるとそこは16世紀でしたが、そのうちあらゆる場所で突然にタイムスリップが起こり始めるのが面白い設定です。あちらで過ごす時間とこちらでの現実の時間は一緒ではなく、あちらに長い間いたようでもこちらではほんの少しの時間で、ペネロピーが現実世界で長い間不在ということがないのも上手い設定です。

フランシスとペネロピーは逢うたびごとに心を通じ合わせていきます。緑のドレスを着ているペネロピーに、今ロンドンで流行っている歌だと言ってフランシスが「グリーンスリーブス」を歌うシーンがとてもロマンティックです。フランシスのほのかな思いを伝えるこの歌。この時代にすでに作られていたとは知りませんでした。

メアリー・スチュアートを逃がすために地下トンネルを掘っていたのが、見つかる場面は映画を見ているような迫力です。サッカーズに嫌疑をかからないように、必死の隠蔽工作をする人々。そして・・・。

エリザベス女王とメアリー・スチュアートの確執を少し知っておくと、楽しさ倍増です。

とってもロマンティックで、でもスパイ小説並みのサスペンスを持った作品です。


☆エリザベス時代のサッカーズに迷い込んだペネロピーを、その時代の「ティッシーおばさん」が何の疑問もなく親戚の娘として受け入れてしまうところが、微笑ましいというか、屈託がないというか。
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