シーズンチケット
The Season Ticket

ジョナサン・タロック
Jonathan Tulloch

アーティストハウス
おすすめ本
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2001/4/15

 イングランド北部の町ゲーツヘッドに住む小さいが頭が切れるジェリーと、心優しいのんびり屋の大男スーウェルの凹凸少年コンビは、大の親友。学校にも行かずうろつき回る二人だが、彼らには大きな夢があった。彼らが大好きなサッカーチーム、ニューカッスルユナイテッドのシーズンチケットを手に入れること。そのために彼らはあの手この手で、お金を稼ぐことを考える。スクラップ集め、ベビーシッターなどのアルバイトから万引きまで。得られるお金はいつも雀の涙だが、彼らは夢に向かって猪突猛進。

シーズンチケットとは、サッカーの試合を観戦する年間指定席のこと。これを持っていれば、一年中試合が見られますが当然お値段も高い。ジェリーとスーウェルはこの券が欲しくて欲しくて、知恵を絞ってあの手この手でお金を稼ごうとしますが、うまくいかないのが世の常。失敗しても失敗しても涙ぐましい努力を続けます。
彼らの住むのは下町で、裕福とはほど遠い人々の住む町。それだけにシーズンチケットはちょっと贅沢なものどころではなく、天上の星のようなものです。ジェリーとスーウェルは根は悪くないけれど、たばこにドラッグ何でもありの、PTAが顔をしかめる少年の代表。彼らの家庭環境も最悪に近く、子供を見捨てた両親や、暴力と盗みを働く父親や、家出、服役中の兄姉や、絵に描いたような家庭崩壊の中で生きている少年です。だから、彼らのお金稼ぎも決して正攻法ばかりではない。法に背く行為でも全く罪悪感を感じないのです。それでも彼らはこんな現実に嫌気がさしているのでしょう。シーズンチケットは彼らが現実を抜け出す夢のパスポートなのです。イギリスの厳しい階級社会の現実がヒシヒシと伝わる、おかしいけれどずーんと悲しい物語です。

悪名高いフーリガンで有名なイングランドですが、このフーリガンというのは経済的に恵まれない人々がサッカーの試合を見て憂さ晴らしをして、ついでに暴れるというパターンが多いようです。この小説の中でも、サッカー観戦に行く描写で、危ないサポーターたちが大挙登場。敵地に乗り込むときは、訛で相手チームファンとわかるから、生きて帰りたかったら口をきくな、とまでジェリーは言っています。サッカー観戦も決して大げさではなく命がけです。

ケビン・キーガン、ガスコインなどの有名な監督、選手の名前がホイホイ出てくるかと思えば、ツルゲーネフはブルガリアの代表か?いや、きっとルーマニアの代表だ、なんておとぼけもあって笑えます。おまけにスーウェルが可愛がっている犬をキーパーにして、PKゲームを人にさせてお金を稼ごうというアイデアまで出てきて爆笑。サッカー好きにはこたえられないでしょう。

シーズンチケットが高騰しているのも、プレミアリーグが発足してフーリガンの締め出しにかかり、今やサッカー観戦は中流階級をターゲットにしている状況が裏にあるらしいです。スタジアムが安全になるのは良いことですが、パブで酔っぱらってクダ巻いてるフーリガンも怖いですね。たかがサッカーだけれど、イングランドでは大きな社会問題です。W杯を迎える日本にとっても人ごとではありませんよね。


☆プレミアリーグもセリエAも生で見るのは相当な勇気が入りそう・・・。犬がサッカーするのは「ディディエ」の影響?
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