ローワンと魔法の地図
Rowan of Rin

エミリー・ロッダ
Emily Rodda

あすなろ書房
おすすめ本
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2001/1/15

 オーストラリアで大人気のファンタジーです。

 平和なリンの村で異変が起こります。山から流れてくる川の水が止まってしまったのです。川の水しか飲めない家畜バクシャーたちにとっては死活問題です。そしてバクシャーはリンの村にとってもなくてはならないものなのでした。早速集会が開かれ、村の最も強い者たちが解決のため山に向かうことになります。そして気弱な少年ローワンも同行しなければならなくなります。魔法の地図を頼りに一行は進んで行きますが、途中で難問を解き、襲いかかるハプニングを通り抜けて行かねばなりませぬ。果たして一行は水を村に呼び戻すことが出来るでしょうか?

 一言で言って面白いです。ページを繰る手が止まらなくなります。魔法の地図、魔の山、襲い来る難題など、ファンタジーの王道を行く話です。地図に浮かび出るのが具体的な指示ではなく、詩であるところも文学的なファンタジーの見本のよう。

 山に赴く7人も個性豊かなんですよ。正しくは5人の強い大人と、1人のはみ出し者と、1人のか弱い少年です。この「強さ」の定義が興味深いのです。体力、腕力、知力、そして勇気などに長けているものということでしょうが、3人は女性なのです。他は優れていたとしても体力、腕力などではどうしても男性に肩を並べることが難しい女性たちを、その壁を取り払って「最も強い者」としたところが現代的ですね。メンバーを選ぶ過程でも誰が女性という描写がなくて最初は男女の別があまりはっきりしないあたりも、一切の性差別を取り払った理想郷の為せる技でしょうか。こんなに男女同権のファンタジーも珍しいんじゃないかしら。

 そしてこの最も「強い」人々。実はそれぞれに弱点を持っていた、というところが面白いんです。その弱点も実にバラエティ豊か。本当の強さとは何なのか、をちゃんと最後に教えてくれる思想性もあふれた清く正しいファンタジーなんですのよ。

 でも弱点もあったって良いじゃないですか。それが人間ですもの。片意地張って強がってないで、弱さも認めて良いのよ。みんなで補い合って進んでいけばいいじゃない。凹面と凸面がうまくかぶさり合って世の中成り立って行くのよ・・・って最後の教えにちょっと背を向けて肩を抱いてあげたくなる話でもあります。

 大人の魅力のストロング・ジョンは傑出したキャラクターです。つまり素敵な男性ですの。ホホホ。イラストでは長髪をポニーテールにしたたくましい長身を披露しています。体力で劣る部分を知力でカバーするアランも、複雑な生い立ちを背負っていて、ファンタジーにはあまりいないタイプのキャラクターですね。何はともあれ、登場人物の魅力をご堪能あれ。

 本国ではシリーズ化されてすでに第4巻が出ているそうです。続刊を待望してます。

☆バクシャーって毛むくじゃらのバッファローみたいなもの? 
主人公が気弱な少年だってところがとても気に入っちゃった。

 精神的にも肉体的にもはるかに強そうなおとなたちの中で、ローワンはびくびくしてときどきくじけながらもがんばりとおすんだよね。こんなお話を読んでると、ほんの子猫のボクでも大冒険ができるんじゃないかって気がしてくるです。

 なにがほんとうの強さかってことを考えさせられる本だよ。ボクが思うに、ほんとうの強さってのは、自分の弱いところを克服できる強さだと思う。これを読んでてそう感じました。弱点があってもいいの。苦手なことがたくさんあってもいいの。それとその人本人の強さとは関係ない。かんじんなのは、苦手なこととか弱点を持ちながらそれに負けないで立ち向かっていくことなんだね。逃げないこと。もしも逃げたら、たとえ苦手なことがたったひとつしかなくても、どんなに筋肉りゅうりゅうでも、その人は弱いってことになるんだよ。

 てなわけで、ボクもあしたから、永遠のライバル、ねこぜのイヌに道でばったり出会っても逃げないようにしようっと。
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