ロケットボーイズ2
The Coalwood Way

ホーマー・ヒッカム・ジュニア
Homer H. Hickam Jr.

草思社
おすすめ本
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2002/6/30

ウェストバージニア州のコールウッドはアパラチア山脈の麓にある炭坑町。1959年、ここで暮らす少年たちが宇宙に魅せられて、自作のロケットを飛ばすようになります。彼らは町でも有名になり、「ロケットボーイズ」と呼ばれていました。前作「ロケットボーイズ」では、彼らがロケットボーイズと呼ばれるようになるいきさつが語られていましたが、この続編は町の人間関係なども詳細に語っていて、より面白い読み物になっています。


ロケット・ボーイズのサニーは、アメフトの奨学金をもらって大学に通う兄ジムと比べられていつもいじけている少年でした。炭坑の監督官を務める父は兄が大のお気に入りで、サニーとは何かとウマが合わず、親子の断絶寸前・・・と少なくともサニーは思っています。そんなサニーに自信を与えてくれたのが、ロケットであり、ロケット・ボーイズの仲間たちでした。

コールウッドは炭坑だけで成り立っている町です。町のすべての人が炭坑関係者とその家族。昔は、会社が労働者に家を提供して、彼らのための店も作って、他の炭坑町から羨まれるくらい待遇の良い町だったのですが、経営者が代わり、また炭坑閉鎖の危機まで迫ってきてリストラされる人がいっぱい出てくるようになり、人々の暮らしも心もすさみ始めます。何だか、今の不況を思わせる展開は、昔事とは思えなくなってきます。特にリストラされた人々の生活は悲惨です。一部の貧しい地域が、町に出来はじめるのですが、サニーやその母など恵まれた方の人々は、そこを訪れるまでその存在を知らなかったことに愕然とするのです。仕事を失った人が、他に仕事を得る当てもなく、酒に溺れ、生活がさらにすさむ有様は胸が痛くなります。
かつて炭坑は、経済の原動力となる重要な産業だったでしょう。しかし、他のエネルギー資源が出来、また炭坑で体を壊す人も増え、斜陽化していく様は、日本の数々の炭坑と同じですね。

ロケット・ボーイズが趣味で作っているロケットですが、メンバーには段々大きな意味を持ってくることになります。彼らのロケットが科学コンクールで優秀賞を収めれば、大学に行く奨学金をもらえる道が開けてくるかもしれないのです。サニーだけは、父親が監督官という良い地位を占めていて望めば大学に行ける身分なので、仲間の進学を賭けた真剣さが理解出来ずに意見の衝突も起きてきます。それでも友情が壊れないこのメンバーたち、良いですね。優等生のクエンティンや、恋愛の大家を自負するロイ・リーなど、それぞれの得意分野での活躍が時には笑わせ時にはホロリとさせてくれます。

サニーと父の関係は、かなり難しいものです。ロケット・ボーイズがどんなに成功を収めても、父だけは認めてくれない。父にとって大事なのはあくまで炭坑なのです。宇宙への夢など彼には絵空事と思えるのでしょうか。考えてみれば、地中深く潜る仕事をする父親と、空に飛び出すことを考える息子とでは、確かに天と地ほどの考え方に違いがあっても無理ないかもしれません。

母のエルシーも相当ユニークな人物です。でも、夫が監督官になる前に親しくしていた人々が、夫が出世した途端に距離を置き始めた・・・と語る場面はホロリとします。少しでも豊かになることはありがたいことなのですが、他の大勢の人には特別な人のレッテルを押されてしまうのですね。それで、エルシーは開き直って、町にとって特別な事の出来る存在になろうとするところが素敵です。

兄のジムとサニーの仲も、今までうまく行っていませんでした。人気者でスターだった兄と落ちこぼれの弟の組み合わせといえば、勿論うまくいくはずもありません。だから、サニーにはジムは煙たいだけの存在だったのですが、兄が大学に入り家を離れたことで、距離を置くことが出来、兄の思わぬ面をかいま見ることにもなって、二人の関係にちょっとだけ変化が生じるところも少しジーンときます。

山間の小さな炭坑町、住民同士ほとんど全てが顔見知りの世界で、リストラの嵐と闘って生きなければならない住民たちの苦悩が伝わってきます。一部、脳天気で排他主義の人々もいるのですが・・・。

これは作者の自伝です。彼はその後、夢を実現してNASAのエンジニアになりました。そんな彼の青春時代のほろ苦い想い出の数々が、とても生き生きと語られます。前作より面白いと言ってもいいかも。


☆高校生と言えばやはりダンスパーティ。ロケット少年といえども、パーティに興味はあります。相手を誘う様に四苦八苦する様は50年代も今も一緒ですね。


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