プラム・クリークの土手で
ON THE BANKS OF PLUM CREEK

ローラ・インガルス・ワイルダー
Laura Ingalls Wilder


福音館書店
おすすめ本
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2002/1/6

おなじみインガルス一家の物語の3巻目です。オクラホマの「大草原の小さな家」を出てから、長い馬車の旅を続けやっとインガルス一家が落ち着いたのがミネソタ州のプラムクリークのほとりでした。ここで、まず最初に住んだのが土手の家。土の中に掘った穴蔵のような家でしたが、ずっと星空の下で寝ていた一家には、それでも快適な家になりました。やがて、父さんが材木を手に入れ新しい家を建てます。小麦は育っていき、メアリーとローラは町の学校に初めて登校することになります。
大草原でほとんど家族だけで暮らしてきたインガルス一家が、新しい町の中(家は町の中にはないのですが)で新しい生活を始めていく話です。


テレビドラマのファンの方には、シリーズの中でも一番馴染み深い話と言えるでしょう。おなじみの名前も次から次へと登場します。

ここに居を定めると決めた一家が、先住者から譲り受けて住んだのが土手の家。これまた最初に読んだ時の驚きははかりしれませんでした。土手に横穴を掘って中に部屋を作って入り口にドアをつけたものです。おまけに屋根は干し草。さすがにびっくりしていたキャロラインもすぐに気に入り、ここならゆっくり休めるわ、と言ってしまう順応性の高さ!これがあってこその開拓生活ですね。土の中なんて、薄暗くて湿気があって、おまけにムシがうじゃうじゃ出るんじゃないかと危惧してしまうのですが。そして、せっかくの干し草の屋根は牛が踏み抜いて壊れてしまう!屋根を牛が踏み抜くというのは、前代未聞でしょう。

でも、やがてチャールズは町で材木を仕入れてきて新しい家の建設に取りかかります。真新しい木で出来た清潔で頑丈な家。そう、あのドラマでいつも映るあの家です。下には夫婦の寝室と居間があって、屋根裏がメアリーとローラの部屋。家には窓があって、そこにはガラスがはまっている。このガラスっていうのは、今までにも何度もキーワードのように出てくるのですが、なかなか当時は高いらしくて、ガラスの入った窓は憧れでありキャロラインの夢の一つであったようです。おまけに新品の料理用ストーブがあって、キャロライン秘蔵の陶器の羊飼い娘を載せる棚もある。ずっと馬車や草原で生活、それから土手の家で暮らしたインガルス家にとっては夢の家だったことでしょう。窓ガラス、そこにかかったカーテン(使い古しのシーツで作った)、店売りのほうき・・・と、そこにあるもの一つ一つが驚きと喜びに満ちています。「乳と蜜のながれる」肥沃な土地に植えた小麦は取り入れのときにはインガルス家に大きな実りをもたらしてくれるでしょう。何から何まで満ち足りた思いを久々に一家は味わうことが出来ます。

そして今まで遊びと家の手伝いに時間を割いていたメアリーとローラは、近くにある町の学校に初めて通うことになるのです。「村の子ども」と呼ばれて二人はからかわれ、服からひょこり出た足を「しぎ、しぎ!」と言ってはやされます。ここでまたびっくり。からかわれた二人は勿論可哀想だし、許されないことなんですが、要するに二人は靴を履いていないわけです!そんなこと言ってなかったじゃない、ってもう驚愕。でも、他の子たちも履いてない様子で珍しいことではないようなのにまたびっくり。だって、お金持ちのネリーちゃんが「私は靴も靴下も持っているんだから!」って自慢するっていうことは・・・。

落ち着いた日々を送るインガルス家ですが、自然は常に農民に試練を課します。小麦が実ってきた頃、何と突如やってくるイナゴの大群。ムシ嫌いの私は、もう想像しただけで気が狂いそうなイナゴの大群がこれでもかこれでもかと襲ってきて、服も顔も家の中もイナゴだらけ。そして、イナゴは麦は勿論草原の緑のものを全て食い尽くすのです。この降って湧くイナゴの災害というのは、どうにもならない自然現象なんでしょうね。暑さ、寒さ、嵐など作物に被害を及ぼす物は山のようにありますが、イナゴっていうのは格別に耐えられません。気象条件、天災などは人の手ではどうにもならないものだけれど、イナゴは同じ命あるものだけに複雑です。おまえたちのために汗水タラして小麦を植えたんじゃない!って叫びたくなりますよね。そうして草原を丸裸にして延々と居座った挙げ句、突如として西に向かって一目散に道を外す物は一つもなく飛び立っていくイナゴたち。もう想像を絶しています。彼らだって生きていく為だって言われたら、それまでなんですが、イナゴの害だけはムシ嫌いの私には耐えられない!

当てにしていた収穫が望めなくなって、チャールズは出稼ぎに。留守を守るキャロラインと子どもたち。今までチャールズがしていた仕事も全てしなければいけなくなって、その大変さはいかばかりでしょう。
せっかくチャールズが帰ってきても、今度は雪嵐に襲われて、チャールズ不在の中キャロラインは牛たちの世話に吹雪の中を出ていきます。生き物を飼っているっていうことは、とにかく年中休みなし。大雨でも吹雪でも、えさをやらねば飢え死にさせることになるし、一家が生きていくために絶対必要不可欠の家畜たちです。自然の力の大きさ、生きていくことの大変さをしみじみと考えさせられます。

メアリーとローラも大きくなってきて、二人の性格の違いもよりわかってくるようになるのがこの本のもう一つの見所でしょう。早速勉強好きを発揮して優等生の道をまっしぐらの「良い子」のメアリー。学校嫌いで相当おてんばでやられたら徹底的にやり返す(!)術を身につけ出すローラ。でも、どんなに良い子のメアリーでもクリスマスにはプレゼントを我慢して父さんに馬を、というキャロラインの言葉には咄嗟に返事が出来なかったりするところが可愛いです。キャロラインが教会に行く時に、慌ててメアリーとローラのリボンを付け間違えるところも。ブロンドのメアリーはブルーのリボン、茶色の髪のローラはピンクのリボンと、何故か頑強なこだわりを見せるキャロラインに二人は何も言えずに来たのでしたが、実はいつも同じ色には飽き飽き。自分の髪に結ばれたいつもと違うリボンを見て、二人とも心浮き浮きしている場面は、思わず「わかるわかる」と言ってしまいたくなります。聡明なキャロラインにしても、やっぱり妙な思いこみはあるようですね。

草原を転がるタンブルウィード(枯れた草がもつれにもつれてコロコロ風に吹かれて転げ回るあれ)は、何故か郷愁とほのかな憧憬を感じる西部の風物詩で、一度見てみたい、追いかけてみたい、と思っていました。でも、ここに火がついて火の輪となったときの恐怖までは考えたことがありませんでしたね。火がついたままどこまでもコロコロコロコロ。回る放火草に早変わり。怖い。


ドラマでおなじみのキャラクターが総出演。でも、少しずつ役割やキャラクターが違っています。土手の家と土地を譲り受けるのがハンソンさんですが、ドラマのハンソンさんと言えば町の重鎮で製材所のオーナー。良き隣人のネルソンさんは、エドワーズさんとガーベイさんを足して2で割ったような役回りでしょうか。ビードゥル先生はやっぱり学校の素敵な先生なんですが、彼女の家はお店をしていて多分彼女のご両親らしき人たちも出てくるんですね。それから、時々やってくるオルデン牧師。そして、何と言ってもオルソン一家。ドラマと違って町で一つきりの商店ではありませんが、ネリーはドラマそのもののキャラクター。おしゃれで意地悪で自分の家がお金持ちだということを鼻にかけている。ネリーとウィリーが店のキャンディーをすぐ頂いていくところも一緒ですね。このネリーの家でのパーティと、お礼に開いたインガルス家の「町のパーティ、村のパーティ」のエピソードはドラマでも興味深く描かれていましたね。オルソンさんは良い人みたいだし、オルソン夫人もパーティ場面にしか出てこないけれど、そこで見る限りごく普通のご婦人で意地悪そうなところが見られないのが最大の違いでしょうか。すると、ネリーのあの性格は誰に似た?そうそう、懐かしいクリスティとサンディのケネディ兄弟も出てくるし、牛追いの少年の名は何とジョニー・ジョンソン!ローラの初恋相手で、でも彼の心はメアリーでいっぱいだったあのジョニーですね。
この人たちの名前を追っていくだけでもとても楽しいです。

厳しい自然に行く手を阻まれながらも、インガルス一家にとってはそれなりの満ち足りた日々を過ごせた何年かのお話です。ドラマファンは必読ですね。


☆インガルス家のパーティでキャロラインが作ったバニティケーキ。甘くはないけれど、おいしい味がしてカリカリしてふくらんだ中身は空っぽで、かけらが口の中で溶けていくというお菓子。食べてみたい!





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