長くつ下のピッピ
PIPPI LANGSTRUMP

アストリッド・リンドグレーン
Astrid Lindgren

岩波書店、岩波少年文庫他
おすすめ本
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2002/2/3

スウェーデンの小さな小さな町にある「ごたごた荘」と呼ばれる古い家に9歳の女の子がたった1人で住んでいました。その子の名前はピッピ・ナガクツシタ。お母さんはピッピが小さい時に亡くなり、ピッピは船長をしていたお父さんとひろい海を航海していたのですが、嵐の時にお父さんが海に吹き飛ばされて行方不明になってしまったのです。それでピッピは「ごたごた荘」に帰ることにしたのです。サルの「ニルソン氏」と金貨がいっぱい入ったスーツケースを持って。ピッピはお父さんはどこかで生きていると信じていましたが、1人の生活に淋しさは全然感じていませんでした。遊んでいる最中に「もう寝なさい」と言われることのない自由な生活でしたから。それに、ピッピにはニルソン氏と新しく買った馬がいました。ところで、「ごたごた荘」の隣にはトミーとアンニカという男の子と女の子が住んでいました。2人は、新しく引っ越してきたピッピとすぐ友達になります。しつけの良い2人にとってピッピは驚くことばかり。何と言っても凄く力持ちだし、お金持ちだし・・・。でも、2人はピッピが大好きになりいつもピッピが起こす騒ぎに巻き込まれてしまうのです・・・。


ピッピ・ナガクツシタは本名をピッピロッタ・タベルシナジナ・カーテンアケタ・ヤマノハッカ・エフライムノムスメ・ナガクツシタ。と言います。原語ではどうなっているんでしょうね。
とにかく、このピッピ、にんじんのような赤毛にお手製の奇妙な服、両足には色違いの長靴下、足には大きな大きな靴を履いているという人目を引く服装でまずはびっくりさせます。おまけに彼女の肩に座っているのはニルソン氏。つまりサルです。そして、とにかく力持ち。馬を軽々持ち上げてしまうくらいの力があるのです。礼儀とか作法とかには全く疎くて、奔放そのものですが正義感の強い愛すべき女の子です。こんな友達がいたらどんなにか楽しいだろうな、と思わせてくれる子。おまけに人にプレゼントするのが大好きですしね(笑)。

この時代の児童文学の登場人物といえば、やはりトミーとアンニカのようなおとなしくて礼儀正しい良い子が当然と思われていたでしょう。このピッピという破天荒なヒロインの登場が当時どれぐらい驚きを持って迎えられたのか知りたいものです。

ピッピは学校に通ったこともなく、字の読み書きも満足とは言えません。一度だけ学校に行ってみたら、先生のことを「おばさん」と呼んだり「あんた」と呼んだり、先生の質問を「なんであんたは良く知っているくせに人に聞くの」と言ってしまったり、それはもう大変な騒動です。でも、父親と長い航海をして世界中を見てきているから、教科書に載っているのとは違う次元で物事を良く知っているのですね。「ポルトガルの首都はどこですか」と聞かれて、「じかにポルトガルに手紙を出して聞いてみなさいよ」と答えてから、お父さんとリスボンに行ったことがあると言うのです。
ただし、ピッピの世界観には相当な尾ひれが付いていることも事実。エジプトではこう、アルゼンチンではこう、ブラジルではこう・・・と次々変わった習慣の話が出てきますが、爆笑するような話ばかり。でも、今チラチラこういうところを読んでみると、「お父さんは黒人の王様になっている」「ベルギー領コンゴでは人は一日中嘘をつく」などの記述が今時の差別発言に引っかからないかな、と心配になってしまうのです。子どもの頃は素直に楽しめた話も、年と共に妙なところが気になってくるんですね。もし、差別につながるなんてことになってこのピッピが抹殺されるようなことになったらあまりに哀しいですから。

ピッピの面白さの一つに、ピッピの歯に衣着せぬ物言いがあるでしょう。子どもなのに大人相手に、言いたいことをはっきり言う。これは多くの子どもが憧れたことの一つではないでしょうか。相手がおまわりさんであっても、学校の先生であっても、すましたご婦人たちであっても、サーカスの人であっても、とにかく相手によって物言いが変わることはありません。ここは子どもらしい平等観で、時に胸がスカッとしますね。「床はかぜひかない」などの名言にも拍手。

サーカスを見に行った時には、世界一強い男を負かしてしまいます。「あの人、世界一強い男ですもの!負かせっこないわ」というアンニカに、ピッピは言うのです。「そう、男よ。でも、よくって?わたしは世界一強い女の子なのよ!」。あっぱれ、ピッピ。男の方が強いのだという常識を覆したピッピは世界中の女の子の憧れであり、強い味方です。


☆ピッピの作ったパンケーキや、クッキーをご馳走になるのはちょっとご遠慮したいな。お風呂のブラシで生地を叩いたり、床の上で生地をこねたりしたのはちょっとね(笑)。
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