夏への扉

The Door into Summer

ロバート・A・ハインライン
Robert A. Heinlein

ハヤカワ文庫SF
おすすめ本
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2001/6/05

 わーい。やっとボクの出番がやってきました。みなさん、お元気?

ボクがこの本をおすすめするのは、ネコ小説だからです。ホントはポール・ギャリコの「さすらいのジェニイ」のほうがネコ小説としては上だと思ってるんだけど、本棚か段ボール箱のどこかにまぎれて読み返せないのでこっちを紹介するです。

「夏への扉」はタイム・トラベルモノのSF。SFファンのあいだではものすごく人気の高い本です。むかしの小説だけど、いまだによく売れているみたいです。翻訳の表紙はもろネコの後ろ姿! なんとなくボクに似ていない?

物語はまず1970年からスタート。主人公のダンはエンジニアなんだけど、友人と恋人に裏切られてすってんてんになっちゃって、冷凍睡眠で西暦2000年にジャンプするのです。それも、愛猫のピーター(ホントの名前はペトロニウス!)もいっしょに冷凍睡眠しちゃう。

ダンは30年の眠りから覚めて、いきなり西暦2000年12月にほうりだされます。すぐに2001年になって、そこにはダンが開発したさまざまなロボットがさらに発展したかたちで実用化されているのです。家事ロボットとか、製図ロボットとか、ロボットの受付係とか。そのほかにもエアカーが空を飛んでいたり、動く歩道があったりします。現実の2001年とはずいぶん違うけど、そこがまたおもしろいです。まるで手塚治虫なんかのむかしのマンガみたいですね。

社会復帰するのに苦労するんだけど、ダンはなんとかまたエンジニアの道を進もうとします。そうこうしているうちに、すっかり歳を取っちゃって落ちぶれたむかしの恋人と再会したりするのですが、30年前に自分を裏切ったときの威勢のよさは影も形もありません。ダンももう復讐する気分じゃない。年月がすでに彼女に復讐していたからです。

そしてダンは、ある大学教授がタイムマシンの開発に成功していることを知り、なんとかそれで1970年に戻ろうとします。なぜ戻ろうとするかはナイショ。でもひとつだけ言うと、とてもグッとくる話なんですよ。

ストーリーの各場面で、ネコのピーターが大切な役割を果たしています。ダンはただピーターをかわいがるだけじゃない。ちゃんと対等の立場であつかうんですね。そしてピーター自身も単なるペットではなくて、自立したネコとして行動します。とくに、彼の狩りの本能があらわになるところはすごい。そうなのです。ネコは天性のハンターなのです。ただかわいいだけのペットじゃないんです。怒るとものすごくこわいんだよ。

ピーターの好きな飲み物はジンジャエール。ここからしてすでにただ者じゃないってことがわかるでしょ? それから、この本には人間とネコとのつきあい方が書かれています。口でネコが好きって言っても、ネコとの接し方ですぐにウソかホントかばれてしまう。作者はそこのところがものすごくよくわかっていてボクとしてはとてもうれしいです。人間の中にはネコをイヌとおなじようにあつかおうとする人がいるんだけど、それは大きな間違い。イヌといっしょにされちゃかなわないです。ハンターとしても、イヌはネコの足元にもおよびません。ただ、イヌはネコよりもたいてい図体がでかいのでいばっているだけ。

この本は、ネコ好きの人にはとてもおもしろい本だと思います。ほんとうにネコのことがわかっている人に読んでもらいたいです。そういう人たちには、この本に書いてあることにひとつひとつうなずけると思います。それから、ネコのことをよく知らない人にも読んでほしい。ネコが単なるおもちゃではなくて、ちゃんと人格(ネコ格?)をもった、自立した生き物で、偉大なハンターであることがわかると思います。

てなわけで、ボクも決してねこぜのイヌに負けてばかりはいられない。道でばったり出くわしても、絶対にしっぽを巻いて逃げたりしないようにがんばらねば!
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