地雷を踏んだ象モタラ
モタラとローンムの物語

えぎ いちろう・文
はしもと けんじ・絵


廣済堂出版
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2002/4/7

モタラはアジア象。人間のために材木を運ぶ仕事をしています。モタラというのは“緑のお母さん”という意味。心やさしく、働き者のゾウさんです。

ローンムはいたずら者のインコ。ローンムというのは“風”という意味です。ひょんなことからローンムはモタラと出会い、たちまち友だちになります。2匹は幸せに暮らし、穏やかな日々が過ぎていきました。

ところがある日、仕事の合間に、モタラが地雷を踏んでけがをしてしまうのです。けががひどく、モタラは倒れ込んで泣き叫びます。驚いたローンムはパニック状態。あわてて人間たちを呼びに行きますが、人間たちはモタラがもう助からないだろうと思います。でもローンムが必死に呼びかけて、人間たちはモタラをゾウの病院に連れていくことにします。

村にトラックが用意されたのですが、村まではモタラは自分の足で歩いていかなければなりません。みんなに励まされ、必死に歩いていくモタラ。そしてやっと村にたどり着き、トラックで病院へ連れていかれます。

さっそく治療が始まりますが、モタラの傷はひどく、足を切り落とさなければなりません。人間たちが相談して、手術が行われることになりました。でもゾウの大きな手術は世界で初めて。麻酔薬がどれくらい必要かすらわかりません。それでも何とか手術が始まり、モタラの足が切り落とされます。大変な手術でしたが成功し、モタラは驚くほどの生命力を示して意識を回復し、数日後には3本の足で立ち上がろうとします。

その日から、モタラの新しい仕事が始まります。何と、ゾウのための義足がモタラにつけられることになったのです。世界で初めてのゾウの義足です。それが成功すれば、傷ついたゾウたちを助けることができるようになるのです。大変な訓練が必要ですし、モタラは再び転んでまたけがをするかもしれません。それでもモタラはみんなに励まされ、この新しい仕事に挑戦することを決意します。

実はこれ、ほんとにあったお話です。モタラは1999年8月15日、ジャングルで地雷を踏み、病院に連れていかれました。足だけでなく、全身のけががひどくて、最初は安楽死しかないと思われたのですが、たくさんの人の寄付と協力があって、8月28日、世界で初めての大手術が行われました。

人間はモタラの仕事仲間。彼女は人間が大好きです。でも、彼女を傷つけた地雷を地面に埋めたのも人間。モタラの周囲の人間はみなやさしいのですが、人間はとてもひどいことをする動物でもあります。

病院の責任者のソライダさんやローンムとのふれあい、懸命に生きようとするモタラの強さと、彼女を励ます周囲の人たち。涙なしには読めません。とても平和な雰囲気の物語であると同時に、何と悲しいお話なのでしょう。でも、モタラもローンムも人間たちも、誰も希望を失いません。

アジア象は人間と仲がよく、働き者です。インドやタイなどでは、ゾウなしでは人間は生活できないほどです。でも、そのゾウを傷つける人間もいるのです。地雷は人間だけでなく、動物たちも傷つけます。絶対に許されるものではありません。

モタラの義足が成功して、彼女が再び4本の足で自由に歩き回ることができる日が来ることを祈ってやみません。そして、傷ついたほかのゾウたちにも希望を与えることを。

☆ボクはアフリカ象ですが、アフリカ象は警戒心が強くて滅多なことでは人間と仲良くなりません。しかもどう猛。働き者のモタラのことを思うと、ちょっと恥ずかしくなってしまいます。でもアフリカにはゾウの孤児院があるんだよ〜ん。そこでは人間とゾウたちが仲良く暮らして、密猟者に親を殺されたゾウの赤ちゃんたちが人間の世話を受けてすくすくと育っています。
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