琥珀の望遠鏡
The Amber Spyglass
フィリップ・プルマン
Philip Pullman

 新潮社
今週のおすすめ本
(C) 2002 Paonyan?. All rights reserved



2002/3/30

ライラの冒険シリーズ3部作完結編。
コールター夫人に連れ去られたライラを探し求めることにウィルは躍起になる。そんなウィルを助けるのは天使のバルサモスとバルクだった。ライラは、コールター夫人に山奥に閉じこめられて薬で延々と眠らされていた。遂にライラの居場所を突き止めたウィルは、アスリエル卿の遣わしたスパイのガリベスピアンたちのシュバリエ・ティアリスとレディ・サルマキアの力を借りてライラを救い出す。ライラは、助けるために連れ出したロジャーに結局悲惨な運命を与え、謝罪も出来なかったことを悔いていた。その心残りを何とか遂げようと、死者の国に行くことを考え始める。一方では、強大な組織がライラの命を狙っていた・・・。


3部作、遂に完結です。
やっぱり第2部は、この3部への序章であったことがはっきりしました。
あれこれ言いたいところですが、これは先の見えない展開が楽しみの一つですから、あまりストーリーには触れないことにします。
ただ、最後を飾るのにふさわしくオールスターキャストで懐かしいあの人この人が出てくるのがとても嬉しかったです。ライラやウィルは勿論のこと、クマのイオレク・バーニソンや魔女のセラフィナ・ペカーラ、気球乗りのリー・スコーズビー、一緒に旅に乗り出したジプシャンたちや、ジョーダン学寮の学寮長まで。

それから、新しい登場人物も魅力的でした。ガリベスピアンという身長が20cmぐらいしかない種族は、アスリエル卿の仲間として、スパイ活動を行います。その中でもシュバリエ・ティアリスとレディ・サルマキアは、命を賭けてもライラを守ることを約束してライラとウィルと行動を共にします。体は小さくても、勇猛果敢でプライドの高いこのガリベスピアンたち。最初は、ウィルもライラも心を許せなくて、衝突を繰り返しますが、旅を重ねるうちにすっかり心が結ばれてお互いなくてはならないものになってきます。でも、ガリベスピアンたちは、その小さい体ゆえか寿命の短い種族なのです・・・。今回、一番目を引いた新しいキャラクターたちは、このシュバリエ・ティアリスとレディ・サルマキアでした。

それから、オックスフォードの教授メアリー・マローンは全てを投げ捨ててチッタガーゼにやってきます。そこで出逢って一緒に暮らす車輪のついた生き物ミレファ。胴体はまるで象みたいという生き物。何分車輪付きですから、移動に疲れることもなく、その上平和的な動物でなんともファンタジックで平和な世界に一時ホッとさせられます。

アスリエル卿とコールター夫人は、最後の最後までわからない人たち。とにかく頭の中で何を考えているのか、風見鶏のようなコールター夫人ですから。この2人については、読んでのお楽しみということで・・・。

しかし、クマのイオレク・バーニソンが出てきて喜んだのも束の間。彼の取った行動はあまりにショッキングでページを繰る手が止まってしまいました。それについて言及出来ないのがすごーく辛い。これを読んでいらっしゃる皆さん、ネタバレは望まないでしょう?まあ、それも自然の摂理としてわかるし、イオレクの気持ちもわかるんですが、生理的に受け付けないところは私の人間ずれしたところかなあ。

やっぱり大好きなリー・スコーズビー。これはちょっとネタバレ覚悟で、根っからのテキサス男の彼が故郷によく似た大草原を目にして、きらめく星の下でヘスターと出逢うところは、文句なく泣かせます。

これは凄い話です。子供向けファンタジーと思ったら大間違いでしょう。カーネギー賞受賞もうなずけます。扱う世界が神であり、信仰であり、死後の世界であり、キリスト教による教えを下手したら根本から覆しかねない何とも斬新と言うか、一歩間違えば大変な非難を受けるような繊細極まることを扱っています。それが故に、この滅茶苦茶大きなスケールを実現し得たわけではあります。

最後も泣かせます。一年に一度・・・。もう、これ以上は語りますまい。
668ページという大長編、手に持って読むのにとにかく肩が凝ります(笑)。でも、読む価値は絶対にありますね。子供向けのファンタジーだと簡単な気持ちで手に取らない方が良いでしょう。体調の良い時に、根性入れて読んで下さい。


☆正しい判断をするより、怖がりと思われたくないんだ・・・というウィルの心情。わかります。ウィルはその点、やっぱり私たちの世界の子供なんですよね。



Ads by TOK2