はるかな国の兄弟
BRODERNA LEJONHJARTA

アストリッド・リンドグレーン
Astrid Lindgren

岩波書店、岩波少年文庫
おすすめ本
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2002/2/10

ヨナタンはおとぎ話の中の王子様のように美しい容姿をした優しくて力持ちで何でも出来る人気者の少年でした。ヨナタンの弟のカールは体が弱く伏せがちでしたが、ヨナタンはそんな弟にとても優しく、カールはこよなく兄を慕っていました。病気のために余命いくばくもないカールに、ヨナタンは死んだらナンギヤラという国へ行くのだと語って聞かせます。しかし、そのナンギヤラに先に行ってしまったのは強いヨナタンでした。家が火事になりカールを救うために火の中に飛び込んで窓から身を投げカールをかばってヨナタンは死んでしまったのでした。嘆き悲しむカールもやがてナンギヤラに行くことになり、そこでヨナタンと再会して一緒に暮らすことが出来るようになります。ナンギヤラはとてもとても美しい国で、カールはもう病気に悩まされることもありませんでした。しかし、幸せな生活も束の間、近くの「野バラ谷」で怪物カトラを操り牽制をふるって村人を苦しめているテンギルに立ち向かうために勇士ヨナタンは出かけていきます。ひとりぼっちに耐えかねたカールもやがて後を追い、兄弟は壮大な冒険に巻き込まれていくことになります。


リンドグレーンの壮大なファンタジーです。リンドグレーンには「ピッピ」や「やかまし村」のような等身大の子どもたちの生活を描いた作品が多いのですが、これはちょっと趣が異なりとてもスケールの大きな冒険物語に仕上がっています。

ヨナタンとカールが行くナンギヤラはいわば天国のようなところです。そこは一般に思い描かれるような、花が咲き乱れる美しい楽園で人々は皆親切で、俗世の悩みも忘れ幸せに過ごせるはずでしたが、そんな世界にももめ事が起きます。近くの「野バラ谷」を制圧したテンギルに捕らえられた重要人物オルヴァルを救いに行く任務がヨナタンに課せられるのです。オルヴァルの最期はナンギヤラの最期を意味するくらい大事な人物なのです。せっかくの幸せな生活を捨ててヨナタンは1人「野バラ谷」に向かうのです。残されたカールは、1人ぼっちに耐えられなくなって兄の後を追います。それまで、いつも兄に守られて弱い存在だったカールが、初めてと言っていいくらい自分の意志で行動に出るのです。

テンギルの手下に捕らわれたカールは老人マティアスに救われ、そこでやはりかくまわれていたヨナタンと無事再会を果たします。そして2人は力を合わせてオルヴァルを救うことに全力を注ぎ、やがては人民とテンギル軍との一騎打ちを迎えてしまうのです。

白い家に住むおじいさんのマティアス。ヨナタンとカールの兄弟をかくまい、年は取っても勇者の心を忘れない素敵なおじいさんです。こういう話にはやはり経験を積んで尚かつ人間の出来た年輩者の存在は欠かせません。

天国であるはずのはるかな国ナンギヤラで起きる中世を思わせる闘いというのがこの話のクライマックスです。人間は死んでこの国へ来たはずなのに、死ぬことによって心が清められたわけではないようです。それが証拠に権力の権化のようなテンギルが存在し、仲間のような顔をして敵に通じる裏切り者もいるのです。ナンギヤラは確かに美しい地ではあり、この世での苦痛のいくつかは解消される地であるのですが、究極の地ではないわけです。

でも、この話の救いははるかな国は決して1つではないということ。いっぱい遊んで歌って踊って楽しく暮らす「はるかな国」もあるのだということです。これについては深く語れませんが、命の無限さを感じさせてくれるこの話のスケールの大きなところです。



☆リンドグレーンさんが行ったところはどこでしょう。「サクラ谷」?平和になった「野バラ谷」?それとも・・・。

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