ハリー・ポッターと賢者の石
Harry Potter and the Philosopher's Stone

J.K.ローリング
J.K.Rowling


静山社
おすすめ本
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2001/12/9

私は大層な天の邪鬼なので、流行りものは読まない、見ないという人間なのですが、必要に迫られてこれは読みました。
映画も公開されて大フィーバーしているので、ほとんどの方が読んだことはなくてもタイトルはご存じでしょう。

舞台はイギリス。両親を亡くして、伯母一家のもとで不遇な生活を送っているハリー・ポッター少年のところにある日、手紙が舞い込みます。伯父さんは大慌てでその手紙を処分しますが、手紙は次から次へと降ってきます。いよいよ家を捨てて逃げ出したとあるところに大男のハグリッドが現れ、ハリー・ポッターを魔法学校のホグワーツへ迎えるのだと言います。魔法学校で必要なものをダイアゴン横丁で買いそろえたハリーは、いよいよキングス・クロス駅の9と3/4番線から、ホグワーツ魔法学校へと向かう旅に出ます。電車の中で、赤毛の少年ロンと優等生ハーマイオニーと親しくなったハリーは、この二人と一緒のグリフィンドール寮へ入ることになり、二人との友情を深めます。実はハリーは魔法界では有名な少年。闇の魔法使いヴォルデモートがただ一人殺せなかった人物だったのです。ホグワーツでもその才能を発揮して、早速魔法のほうきの見事な乗り方を披露して、一年生ながら大人気のゲーム、クィディッチの選手に選ばれます。しかし、このホグワーツには入ってはいけないという部屋があって、そこには恐ろしい犬が番をしているのですが、その犬が守っているのが賢者の石と呼ばれる命の水の源になる石で、それを狙う悪者の存在にハリーたちは気づき、賢者の石を守るために必死の闘いを繰り広げます。


これは好きな人と嫌いな人とにはっきり別れる話でしょうね。世界中でこれだけ売れているっていうことは好きな人が多いってことでしょうが、「ナルニア国物語」「ゲド戦記」と並ぶファンタジーの傑作とまでPRされるとちょっと行き過ぎと思いますが。これは、古き良き伝統に彩られたファンタジーとは趣が全く違う新しい時代のファンタジー冒険物語であることは間違いないです。

結構長い話ですが、面白くて飽きさせません。ハリーの生い立ちから、伯母さん宅でいじめられるところなど、壺を押さえた展開。そのハリーに舞い込む寄宿舎生活は何と魔法学校からの招待でした。不幸な境遇だった少年が、信じられる仲間に出会い、勇気を発揮し、大きく成長していく児童文学では基本路線をしっかり押さえている作品だと思います。

特にクィディッチという空中ゲームを考え出したことは凄いですね。これは本の中では想像するだけでしたが、映画で見ると本当に凄い迫力なんです。このシーンだけでも見る価値はあります。

友達のロンとハーマイオニーも良いキャラクターですよね。優秀な兄弟にいつもコンプレックスを持っているロンと、優等生でついつい人にお説教をしてしまうハーマイオニー。二人とも、ちょっとずつ欠点を抱えているところが自然で好感が持てます。
それから好きなのがハグリッド。ちょっと口は軽いかもしれないけれど、心優しき大男。

先生たちも個性的です。とりあえず悪役No.1に徹しているスネイプ先生の不気味さ。好々爺然としているダンブルドア先生。厳しいけれど結構物わかりも良いマクゴナガル先生など。彼らは映画ではそれぞれ、アラン・リックマン、リチャード・ハリス、マギー・スミスが演じていて、実に適役でした。

ただこの話は、徹底的に視覚に訴えるストーリーだと思います。クィディッチはその代表格でしょう。
それにハリーは生い立ちこそは悲惨だけれど、後は何かと恵まれていて、両親の遺産で魔法学校入学用品を買いそろえ、お菓子を買いまくり、箒で飛ぶ能力が抜群となるやクィディッチのメンバーに選ばれ、ニンパス2000という最高の箒もプレゼントしてもらえる。そして、親の物だったという姿を消す魔法のマントもある日突然ハリーの元に贈られる。ホグワーツに行ってからのハリーは、ラッキーの連続です。これが天才ならではの幸運なのでしょうか。
それにクィディッチは確かに面白いんですが、他のメンバーが10点、10点必死に稼いでもシーカーが金色のスニッチを取ったら150点。
それで試合は終わり。とすると他のメンバーの頑張りってほとんど意味を為さないんですよね。それでも頑張る他のメンバーは偉い!ただ一人の天才をたてるために、凡人はそこまで犠牲にならなければならないのかな、と少し哀しくもなってきます。

このクィディッチの得点システムといい、ハリーの望む物が何でも天から降ってくるように手に入る所といい、これは経済的に恵まれなかったJ.K.ローリングの一攫千金願望がそこここに顔を出しているのではないかと思うのは考えすぎでしょうか。彼女がそれまで置かれていた環境を思えばそれは無理ないことと思うのですが。

それから、ダーズリー夫妻。忌み嫌っている妹の子供をそれでも育てたのはどうしてなんでしょうね?将来のトラブルは予想できたわけだから、養子に出すなり施設に入れるなり出来たはずなのに。それでも尚、休みになるとハリーを迎え入れるあたりを見てると、あながち悪い人でもないのでは、と思ってしまいます。自分たちには理解出来ない物が恐ろしいのですよね。

寄宿舎生活や魔法学校の様子はとても興味深く読めました。これはイギリスならではのものですね。変わった食べ物の数々は、どうも食べてみたいという気にはなれなかったのですが。特に百味ビーンズ。

古き良きファンタジーと言うよりは、ロールプレイングゲームを見ている世界です。最初から映像化が頭の中にあったのでしょうか。映画で見ると、スリリングで驚くべき迫力のシーンがかなりあります。ハリーも才能あるいい子なんですが、全てに恵まれていて、心の葛藤とかそういう物がほとんど無くて、凡人のロンやハーマイオニーの勇気、そして気弱なネビルの勇気の方が心に残りました。

ちょっと批判的なことも書きましたが、とにかく一気に読ませる面白さを持った話であることは間違いありません。好きか嫌いかは、やっぱり自分で読んで判断するべき物と思いました。

旬のうちに是非一度読んでみて下さい。


☆ファンタジーや家庭小説の中の憧れの一つは未知の食べ物だったんだけれど、この小説には未知すぎてチャレンジする気になれないものが多かったのが残念です。
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