ふくろ小路一番地
The Family from One End Street

イーヴ・ガーネット
Eve Garnett

岩波少年文庫
おすすめ本
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2002/4/14

ラッグルス一家は子沢山。旦那さんのジョーはゴミ屋さんをしていて、おかみさんのロージーは洗濯屋さんをしています。子供は全部で7人。子供たちは、毎日のように騒ぎを起こしてくれます。長女のリリー・ローズは母さんの洗濯を手伝おうとして、お客さんの緑のペチコートを縮めてしまいます。次女のケートは、奨学金で中学に進める事になるのですが、制服やその他の物を揃えるのに一苦労。挙げ句にせっかく揃えた帽子を海でなくしてしまいます。双子のジェームズとジョンは、ブラック・ハンド・ギャング団と名付けられたちびっ子ギャング団に入り、密航したり人のパーティに出たり、様々な冒険をします。そして、ある日ラッグルス一家は憧れ続けたジョーの兄の住むロンドン行きをとうとう実現することになるのです。


ラッグルス一家はお世辞にも豊かとはいえない家です。そして、品の良い家ともいえないでしょう。子供たちはそれぞれに大騒ぎを起こして、親たちを悩ませます。この話の良いところは、お金がなくても愛で結ばれている、という家庭小説の王道を進まず、それぞれが時には感心しない行いをしつつも日々流れていく生活を素朴に綴ったことだと思います。勿論、この一家が愛で結ばれていることは勿論なんですが、それをいかにも美しく前面に押し出さないんですね。

おかみさんのロージーは、テート美術館で見たサージェントの絵をすっかり気に入り、その絵の通り初めての子供には「カーネーション・リリー・ローズ」と名付けると息巻きます。しかし、実際にはさすがに「カーネーション」という名前はあまりにも名前らしくなく、「リリー・ローズ」という名前で妥協します。「リリー・ローズ」って素敵な名前ですね。

次に生まれた女の子には、旦那さんが母親の名前を付けると言明。素朴にケートという名前が選ばれます。

次に生まれた男の子の双子の名前の付け方がまた面白くて、聖書の12使徒の名前の上あたりで、目を閉じて鉛筆を落として決めたのです。

次の男の名はお父さんと一緒でジョー。

次の女の子にはおかみさんの意見が通って、マーガレット・ロージーと名付けられます。おかみさんは、花の名が好きなロマンティックな人なんですね。

最後の男の子の名には、牧師さんのセカンドネームをもらってウィリアム。
この子供の名付け騒動を見ているだけでも面白いです。

最後に一家は、長年の夢を果たして久々のロンドン行きを決行します。旦那さんのお兄さんが馬を品評会に出すことになって、その見学を兼ねてのロンドン行きでした。しかし、ここでも騒ぎが次々と起こり・・・。

今までのイギリスの児童小説と言えば、中流以上の家庭の子を描いた話が主流でした。そこに出てきたのが、この話。階級制度の厳しいイギリスで、いわゆる労働者階級の生活を暗さなどかけらも感じられずに楽しく描いたということで画期的な作品だったそうです。
そういえば、本当にイギリスの児童小説でこのような労働者階級の家を描いた物はあまり思い当たりませんでした。
上流への憧れと夢に浸るのもいいけれど、時には自分と同じような生活をしている子供たちの話を読むことが出来て当時の子供たちは爽快感を感じたでしょうか。自分たちも主役になれるんだという。


☆下の男の子のジョーは映画、特にミッキーマウスの映画が好きで、映画館には行きたし、お金はなし。とうとう、オーケストラボックスに忍び込んだところは面白かったですね。でも、オーケストラボックスがあるってことは、当時はサイレント映画だったってこと?


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