エーミールと探偵たち
EMIL UND DIE DETEKTIVE


エーリヒ・ケストナー

岩波少年文庫
おすすめ本
(C) 2001 Paonyan?. All rights reserved



2001/9/3

田舎町ノイシュタットに母と2人で住むエーミールは、1人で祖母と叔母一家が住むベルリンに遊びに行くことになる。母から渡された大事なお金を上着にピンでとめ、列車の中でついつい居眠りしてしまう。エーミールが目覚めたとき、何とお金がなくなっていた!前の席に座っていた山高帽の紳士グルントアイスが獲ったに違いないと睨んだエーミールは、彼を追っかけてベルリンを歩き回る。グルントアイスを見張りながらどうやってお金を取り戻そうかと考えていたエーミールは、ベルリンの少年たち、教授やグスタフと知り合いになる。エーミールの話を聞いた彼らは仲間を集め、グルントアイス徹底見張り作戦を開始するのだった。


少年探偵大活躍の大変楽しいお話です。故郷の町で銅像にいたずら描きしたことを気に病んで、警察に行けないエーミールに差し伸べられた友情の沢山の手。お金を獲った泥棒がすぐそこにいる、と聞いた少年たちの好奇心はもはや尽きるところを知らず、捜査に夢中になってしまうのもわかりますね。それも団体ならなおさらの事。

どこにもリーダーはいるもので、作戦を考えてそれぞれに役割を振って冷静に作戦を遂行していくのは教授というあだ名の少年です。さすがにそのあだ名がついているだけのことはあって、大人顔負けの綿密な計画を立てていきます。
その教授とエーミールが、お互いの家族のことを話し合うところはちょっとしんみり。経済的に恵まれているらしい教授の家では、お互い愛し合ってはいてもすれ違いも多い。恵まれないエーミールはとても母さん思いで、「一緒にいるしか出来ないけれど、決して母さんっ子ってわけじゃない」というエーミールに、「じゃあ、すごく愛し合っているんだね」と素直に言う教授は良いですね。この年頃の男の子、からかいはしても口が裂けてもそんなこと言いそうにないのに。

「てやんでい」が口癖の行動派、グスタフ。ひたすら電話番に徹したディーンスタークなど、個性的な仲間達。地味ながら、自分の義務を果たしたディーンスタークを最後にちゃんとおばあさんが誉めてあげるところはさわやかです。

時は第1次大戦以降、第2次大戦以前。一つの不幸が終わって、次なる不幸が訪れる前のつかの間の静けさを漂わせるベルリン。年を重ねて読み返すと、悪者退治に頑張ったこの少年たちはちょうど第2次大戦を迎える頃に大人になるはずで、その後どんな人生が待ちかまえていたのだろう、と余計な事まで考えてしまいました。そこまで考えてしまうのは、やはり原作者がナチスに反抗したケストナーだからでしょうね。

でも、そんな余計なことは置いておいて、少年たちの素人探偵ぶりと一致団結ぶりが爽快なとても楽しいお話です。


☆でもねえ、列車で真向かいの席に座っていたっていうだけでグルントアイスさんが獲ったって確信してしまうのも、ちょっと短絡的過ぎるって気もするんですが・・・。
Ads by TOK2