ドラゴンの眼

The Eyes of the Dragon

スティーブン・キング
Stephen King

アーティストハウス
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2001/5/28

 昔々あるところにデレイン王国という国がありました。そこの王様であるローランド王は若くて聡明なお后サーシャと結婚して、ピーターとトマスという2人の王子様が誕生しました。しかしサーシャ妃は若くして亡くなってしまい、ローランド王は悲しみの中で2人の王子と共に、特にお后の面影を強く残す兄のピーター王子を心の拠り所に生きていました。ところでローランド王の側近に魔術師のフラッグがいました。彼こそはデレイン王国を操る陰の実力者でした。彼は王国を自分の意のままにしてやがては滅ぼすという欲望を持っていました。しかしそのためには次期国王になるピーターが邪魔でした。ピーターは見目麗しいだけではなく、正義感が強く頭の良い好青年に成長していましたから、彼が国王となった暁にはフラッグは追放されてしまうことが目に見えていたからです。そこでフラッグは一計を案じます。ローランド王を殺して、その罪をピーターにかぶせるのです。作戦は成功し、ピーターは無実の罪で高さ90メートルもある針の塔に幽閉されます。そしてフラッグは弟のトマスをうまく操り王国を段々荒らしていくのです。ピーターは、父殺しの汚名を晴らすため、脱出を決意しますが・・・。

スティーブン・キングと言えば今最も売れている作家の1人。そしてモダンホラーの帝王です。その彼がファンタジーなんて、とちょっと懐疑的な思いで読み始めましたが、これがびっくり。どこから見ても王道を行くファンタジーに仕上がっています。王様と2人の王子、魔術師、ドラゴン、幽閉された高い塔、水晶球、毒薬、ファンタジーのエッセンスをこれでもかと詰め込んで、テンポの良さでぐいぐい引っぱっていきます。

主役のピーターはファンタジーの王道を行く素敵な王子様。格好良くて、頭が良くて、性格も良くて、生まれながらの王の威厳が備わっています。この天の邪鬼の私が素直に主役が好きになりました(笑)。でも格好良さだけではなくて、罪を問われていきなり泣き出すような少年っぽさを残していてそこが可愛い。まあその人間らしさが命とりだったわけなんですが。
父親のローランド王は、考えるのに時間がかかるという王様としての資質には少々?がつく人なんですが、憎めない人です。魔術師フラッグの言うがままかと思えば、結構言うべきところはピシッと言うし。
それからピーターの親友ベン。王子の幼なじみで、以前は大きな力を持っていた王子の親友の立場が逆に自分たち一家の命取りになり始めても、なおかつピーターを信じていると大きな声で言う勇気を持った人。悪く言えば若さの証拠?いえいえ、男同士の友情、良いですねえ。

司法長官のアンダーズ・ペイナ。世の中を知り尽くしている人のはずなのに、たった一つのことでピーターの有罪を信じてしまういささか単純さを持ったおじさん。あなたが早合点するからでしょう?この話が入り組んだのは(笑)。
黒魔術師フラッグは「ザ・スタンド」などにも出ていたキング作品の有名登場人物です。悪の見本みたいな人なんだけれど、その割りにあちらこちら抜けていたり、大事なときに風邪引いて魔力が落ちていたり、悪の大魔王にはなりきれない人です。

登場人物が(フラッグさえ)完璧な人物像ではなくて、どこか抜けているところがかえって親近感を持てますね。もともとはキングが愛娘のために書いたお話ですから、より登場人物を身近に感じられるように設定してあるのかもしれませんね。とにかく魅力に富んだ登場人物は、今までのキング作品の中でもかなり群を抜いているのではないかと思います。

あと伏線が効いている。これは最初から目が離せません。ドールハウス、ナプキン。ホラーの帝王がいきなりドールハウスの話です。これには面食らったけれど、思わず唸るアイデア。国の一番の細工師に作らせた細部まで精巧に作られたドールハウス。うーん、見てみたい。それから、慈悲の女王の時代に、貧しい人々に仕事を与えるために部屋いっぱい作らせた王室の紋章入りのナプキン。ファンタジーなんだけれど、キーポイントになる小物が何だか生活に密着している物なのが、面白くて逆に新鮮です。

何でも早速アニメ映画の製作話が進行している模様。しかし、私としてはここは何としても実写で映画化していただきたいです。ピーターにベン、素敵な若い男性が大活躍のこのお話、アニメでなんて勿体ない!ここは是非、ハンサムさんを起用して・・・(笑)。精巧なドールハウスも見せて欲しいし、アンダーズ・ペイナはかつての大物俳優が貫禄で演じて欲しいな。


☆デレイン王国の国民の末裔がやがてキャッスルロックに流れてくるのだろうか。
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