クリストファーの魔法の旅
The Lives of Christopher Chant

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Diana Wynne Jones

徳間書店
おすすめ本
(C) 2002 Paonyan?. All rights reserved



2002/1/27

クリストファーは幼い頃から色々な夢を見ることが出来ました。彼が自ら名付けた「あいだんとこ」という岩場のような所から、「大体どこへでも」行けるのです。その世界はクリストファーが現実に住んでいる世界とは違って、冒険に満ちあふれた世界でした。そして時にはちょっとしたおもちゃをもらったりするようなささやかな冒険の時もありました。クリストファーはこれは全て眠っている間の夢だと信じていたのですが、彼は別の世界へ旅することの出来る強い魔力を持っていたのでした。それを知った伯父のラルフは自分の利益のためにクリストファーを違う世界へ行かせますが、心配したクリストファーの父は彼を探知能力者の所へ連れて行きます。実はクリストファーは、次代の大魔法使いクレストマンシーになる定めなのだと言われます。修行のために老クレストマンシー、ゲイブリエルの城に引き取られたクリストファーは魔法修行など面白くなく、孤独感を募らせますが・・・。


大魔法使いクレストマンシーシリーズの第2巻です。クレストマンシーというのは、魔法界での役職の名で、魔法の悪用を見張る役目を負った人物のことです。特別強い魔力を持った魔法使いで、何と9つの命を持っている特定の人物しかなれない職なのです。前作「魔法使いはだれだ」でおしゃれなクレストマンシーとして登場した彼の少年時代を描いた話です。

古きロンドン。お父さんはフロックコートとシルクハット。お母さんはおびただしいひだとフリルとたっぷり広がったスカートをはいていた時代の大きな館で育ったクリストファーは、お世辞にも仲が良いとは言えない両親のもとで孤独な日々を過ごしていました。でもそれを補うのがクリストファーが眠っている時に見る様々な夢でした。夢の中ではクリストファーはいろいろな世界に行っていろいろな人に会って、いろいろな冒険をするのです。でも、それは自分でも知らないクリストファーの秘めた能力・・・強い魔力のおかげだったのです。何故なら、クリストファーは次代のクレストマンシーになる特殊能力を秘めた魔法使いだったのですから。

前作の学校の賑やかさとはうってかわって、今度はロンドンの大邸宅が舞台です。ちょっと時代がかったロンドンの雰囲気が魔法にとてもマッチしています。子どもには無関心な(とりあえず最初は)両親のもと、「最後の家庭教師」ミス・ベルに主に世話されて暮らす孤独なクリストファーの前に現れてすっかり彼の心を虜にしてしまったラルフ伯父でしたが、実はとんでもない悪党。クリストファーは自分ではそれとは知らずにラルフ伯父に利用されまくります。「どこかな世界」からラルフ伯父の所望するものを持ってくるのです。その一つが生けるアシェスである女神の元から持ってきた猫のスログモーテンでした。この猫がのちのちとても重要な役目をするので要注意。

孤独なクリストファーも大きくなって寄宿舎に入ってからぐーんと世界が広がります。それまでは「どこかな世界」へ行くのだけが楽しみだと言っても過言ではありませんでしたが、学校で現実の楽しみを沢山知ります。まず、学校への旅立ちとなった列車の中で同じ客車に乗り合わせた2人とすぐ親友になり(ん?どこかで聞いたような?)、学校ではクリケットに夢中になります。でも、そんなクリストファーの少年らしい楽しみもすぐにうち切られてしまうのです。クリケットをしていてバットが頭に当たり、何と気がついた時には彼は死体置き場に置かれていたのです!そこからの無事な生還も束の間、クリストファーは死んだはずなのに死んでいない、つまり命が複数あるのだということに気付かれ、魔法使い修行の生活へと無理矢理連れ去られるのです。

実はクリストファーの命は9つ。これはクレストマンシーに与えられた特権で、猫と一緒の数だけ命があるのです。ところがクリストファーときたらそそっかしくて、次から次へと命をなくす。何度となく死んでいる様は、不謹慎と知りつつ笑えてしまいます。

舞台はうってかわって古いお城。老クレストマンシーのもとで老人と大人ばかりに囲まれて魔法使い修行をすることになったクリストファーはまたもや淋しさを味わうことになりますが、今度は次から次へと招かれざる客が現れます。
まず、クリストファーが「どこかな世界」で何度となく会っている女神。女神といっても実は少女で、女神生活に嫌気がさし、ごく当たり前の女の子の寄宿舎生活に憧れて自分もそんな生活をしたいと願っている女神らしくない女の子です。
そして、「どこかな世界」で会っていたタクロイ。ついにはトラブルの根源のラルフ伯父まで現れて、退屈だったお城はてんやわんやの大騒ぎになるのです。

この作品はダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品に共通するSF色が色濃く出たものとも言えるでしょう。「どこかな世界」というのはいくつもの世界が同時に存在するパラレルワールド。魔法とSFとガス燈の世界が合体するなんて、ちょっとロマンティックでもあり素敵です。でも、物語は畳みかけるようなスピードで展開していきます。クリストファーが一体何番目の命を生きているのか、数えながら読むと良いでしょう。


☆クリストファーがプレゼントしたことから、女神がはまってしまったのが「ミリー」シリーズ。普通の女の子の寄宿舎生活を描いた少女向けのシリーズという設定です。全く寄宿舎はイギリスの児童文学には必須アイテムの一つですね。このシリーズ、魔法ともファンタジーとも無縁だけれど、やっぱり実在していたら読んでみたくなるような雰囲気がありますね(笑)。



Ads by TOK2