なぞの娘キャロライン
Father's Arcane Daughter.

E.L.カニグズバーグ
E.L.Konigsburg.

岩波少年文庫、岩波カニグスバーグ作品集
おすすめ本
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2002/7/14

お金も名誉もある名門カーマイケル家にある日突然17年前大学生だった時に誘拐されて以来消息の途絶えていた娘キャロラインが帰ってくる。父は有頂天の喜びよう。父の2番目の妻のグレースは、キャロラインを探るように質問ばかりする。そして、異母弟妹のウィンストンとハイジは、いつしかこの見知らぬ姉に惹かれていく・・・。


ある日突然、17年前に消息のとぎれた娘が帰ってきたら?それも、母親の遺産を引き継げる期限が迫っているそんな時だったら?キャロラインはまさにそんな時に現れました。17年前、大学生だったキャロラインは資産家の娘故に誘拐され、監禁された小屋で銃撃戦のあとに火事が起き、行方不明になっていました。小屋から身元不明の焼死体が発見され、それがキャロラインのものと推測されていましたが確たる証拠はないままでした。その彼女が、母親の遺産を相続できる最終期限である35歳の誕生日の一ヶ月前に突然姿を現したのです。父は、彼女を娘だと信じて疑いません。2度目の母は疑惑の目を向けます。妹のハイジは、素知らぬ顔。思春期にさしかかる年頃の少年ウィンストンは、そんな周りに振り回されながらも自分なりにキャロラインの真の姿を見つめようとします。果たして、このキャロラインは本物なのでしょうか?

カーマイケル家はお金持ちで、使用人もいて一見何不自由ない家庭です。ウィンストンは物わかりの良い良く出来た少年。障害のある妹ハイジの面倒を見るのが半ば義務となっていて、そのために自分の生活をほぼ犠牲にしています。家に友達を連れてくることも出来ない。母はハイジをただ甘やかすだけ。自分でもそうと自覚しないうちにストレスをためていたウィンストンの様子にただ一人気づいてくれたのが、突然現れた姉キャロラインでした。
そしてキャロラインは、ただ甘やかされているだけのハイジの教育にも着手してカーマイケル家を変えていくのです。

ハイジの障害というのは、あまりはっきりと描かれていないのですが、知識や言葉の遅れらしきものが示唆されています。そのハイジを、半ば「誘拐」してキャロラインは専門教育を施している人の元に通わせるようになります。何分今ほどはそういう教育も発達していなかった時代のこと、果たしてそんなに簡単なものなのかどうかは意見の分かれるところと思いますが、キャロラインはハイジを救うことによって、ハイジに呪縛されているウィンストンを救おうとしました。それまでのウィンストンは、ひたすら自分を殺してハイジの優しい物わかりのよい兄を演じ続ける必要があったのです。13歳の少年には過酷な役回りでした。キャロラインは、はっきりと2度目の母に物を言い、父親をも変え、子供たちを呪縛から救っていきます。

そんなキャロラインは本物だったのでしょうか。これが全編を貫く謎として読者を惹き付けます。彼女は、キャロラインでなければ知らないあれこれを正確に覚えています。昔の知り合いのことも克明に思い出せます。昔の恩師トロロップ先生とも感動の再会を果たします。まさしく、彼女はキャロラインそのものでした。それも過ぎた17年の年月は、お金持ちの無知なお嬢さんだった彼女をすっかり知的でしっかり者に変えていました・・・。

80年代、このドラマ化された作品がNHKで放映されてこの作品に興味を持ちました。主演はステファニー・ジンバリストで、確かパトリシア・ニールやジェームズ・オルソンなどが出ていたなかなか豪華なキャストだったと記憶しています。このドラマの中に出てきた「勇気を持ってやっちゃうのよ」という台詞が今でも心に残っています。

これは様々な変身のドラマです。素敵な女性へと変身したキャロラインを始め、呪縛から解放されるウィンストン。甘やかしという砂糖衣をかぶった世間体の檻の中から自らの力で自分を解放し脱皮するハイジ。父親さえも変身から無縁ではありませんでした。一家にそれだけの影響力を与えたキャロラインという女性の魅力に浸ってください。


☆食事時間に好き勝手に人の物を食べるハイジを戒めるキャロラインが、アニー・サリバン先生と重なって見えてしまいました。
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