ホビットの冒険
The Hobbit
トールキン
J.R.R.Tolkien

岩波少年文庫他
おすすめ本
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2002/3/3

ホビット族のビルボ・バギンズのところにある日、魔法使いのガンダルフと首領のトーリンと12人のドワーフ族たちが訪ねてきます。昔、トーリンの先祖たちが築いた街や財産が突然スマウグという竜に横取りされたことがありました。今彼らはその時に奪われた宝を奪還する旅に出ようとしていたのです。そして、ビルボが「忍びの者」として旅に同行することを求められたのでした。冒険になど縁のない生活をしていたビルボでしたが、いやいや彼らに同行することになります。旅は最初から波乱続き。トロルに遭遇したり、エルフたちのパーティに出逢ったり。数々の苦境を機知で乗り切るビルボはやがて、真の「忍びの者」として仲間たちの信頼を集めるようになります。そして、とうとうスマウグが住む洞窟にたどり着くのですが・・・。


今、映画公開で大ブレイクを起こしている「指輪物語」の言ってみれば序章のような作品です。
主人公はホビット族のビルボ・バギンズ。とっても居心地の良い自分の穴蔵から望んでもいない冒険にほとんど無理矢理連れ出される可哀想な人です。それも年はとっくに50を過ぎている。冒険は普通若者の特権なのですが・・・。もっともホビットは長生きなので、50と言っても人間の50とは全く違ってまだまだ若者といったところでしょうね。ビルボは勇ましいわけでもなく、力が強いわけでもなく、本当にぬくぬくとした穴蔵が気に入っていた普通のホビット(但しホビット族の中では異端視されていたようでもあります)でした。冒険に出ても考えるのは食べ物のことばかり(といえば言い過ぎですが)。そんな彼が、体は小さくても(ホビットは体が小さいのです)、持ち前の機知で様々な苦境を乗り切り、生まれながらの戦士であるドワーフたちを1人で何度も助けては彼らの信頼を段々勝ち取るようになる様が実に小気味良く描かれます。

その後の物語につながっていく「指輪」は実はこの話の中でビルボが手に入れた物です。1人だけ落っこちてしまった洞窟の暗闇の中で拾ったものなのです。しかし、この指輪は指にはめると姿が見えなくなるという大きな力を持ったものでした。この指輪を得たおかげで、ビルボは仲間の窮地を何度も救う活躍が出来るようになります。この洞窟の中で遭遇したゴクリという怪物はビルボを新鮮な食料の到来と歓迎しますが、ビルボが自分の命を賭けてゴクリと行うなぞなぞ合戦は見物です。トールキンは、オックスフォードの言語学の教授ですから、この謎のかけ方にはやはりプロの味が染みてます(言語学とは関係ないかな?)。最後はちょっと反則かな?という気もしますが。それにしても「いとしいしと」が口癖のこのゴクリ。話し相手がいないために独り言を言う癖がついていて、指輪の効能まで1人でべらべらしゃべってしまうなんて.(笑)。ゴクリなくしては、「指輪物語」は生まれなかったですね。

魔法使いのガンダルフ。ビルボとドワーフたちと一緒に旅に出ていたのですが、途中で帰ってしまいます。それまで窮地を救ってくれたこともあるけれど、ここで帰るの?それはないでしょう?という展開。スカーレットを途中で置き去りにするバトラー船長みたいだ〜と思ってしまいました。まあ、でも魔法使いの存在が消えるというのがツボではあるのですが。

ドワーフ族の戦士たち。首領のトーリンは、なかなかの頑固爺さんで、いよいよ宝物を手にした時に私欲むき出しになる様は醜いけれどありがちなこと。とっても、人間的感情の持ち主とも言えましょう。仲間のドワーフたちは、なかなか区別がつかないんですが、トーリンに次ぐNo2的存在(私のお気に入りのポジションですね)のバーリンがいいかな。ビルボにも優しくて、結構物事の善し悪しが見えている。いつも小さなホビットを背負って走っていたドーリ(だったかな?)もご苦労様なことです。

この物語には、他にもエルフやトロルなどファンタジーに欠かせない生き物がいっぱい出てきます。クマに化ける大男ビヨルンも好きです。それから、孤高のワシたちも。そして、人間もしっかり登場します。湖の街エスガロスの人々。旅の途上のトーリンたちを歓迎したのに、結局は彼らのおかげで街に大きな損害を被ってしまう気の毒さで、彼らの宝物の分け前を要求する主張もわかります。

物語はクライマックスに大戦争に突入します。トーリンたちが宝物を独占したがったことから、エルフや人間の軍と一戦を交えそうになるのですが、そこへ彼らの最大の敵ゴブリンとオオカミの軍がなだれこんでくるのです。この五軍の戦いと呼ばれる戦がどうなるかは読んでのお楽しみです。昨日の友は今日の敵。でも、もっと古くからの敵が現れたから今日の敵は今から仲間、とばかりにコロコロ同盟が変わるあたり、まさしく人間への皮肉でしょうか。

「指輪物語」はとにかく長いし、とっつきにくいと思った方は、まずこの本から入って行かれるといいでしょう。長さもそこそこだし、展開も早くて、ユーモアもあって飽きさせません。


☆ドワーフで異彩を放っていたのはやはりボンブールでしょうか。食欲の塊で、それに比例する巨体で、寝てばかりいて、戦士らしくない戦士。こういうキャラクターもいなくちゃね。


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