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皐月の宵夢

黄金華咲く

ヤマサチヒコは
広大な大海原を前にして
呆然として居たのでありました。
聞こえるものは只
雷のような轟く波の音。
慰めるものはとぶ鴎か。
「貴方は何かお悩みか」
その時やさしく
声をかけられたお方は、
白髪白髭の老爺であった。ヤマサチヒコは
思わず身の不幸を語るのだった。
老爺の御名は
シオツチノ翁と云う
「若者よ、何も嘆く事は無いぞ。」
「…。」
「私が手助けしよう。」
老爺は海に向かって両手を広げると。
「メナシカツマノオブネよ出よ。」
と宣られた。
すると目の前の波間に大いなる船が忽然と現れた。
真っ白な帆は陽光に照らされて燦然と輝いて居た。
ヤマサチヒコは気がつくと船上の人であった。
メナシカツマノオブネは霧に包まれると龍宮界へと消えた。
巨大なジンベイザメが海の魚族を引き連れ、悠然と泳いでいる。翡翠色の静寂な世界を船は進む。
龍宮界は海の底に有るにしては、少しも息苦しさを感じずにヤマサチヒコを驚かせた。
広い珊瑚海を船は進む。
しばらく行くと、珊瑚の森の奥に龍宮の城郭が見えた。
すると龍宮の宮から大きな魚が泳いで来る。
これがリュウグウノツカイであるらしい。
「主がお待ちかねでございます。」
リュウグウノツカイに伴われて龍宮城の門を潜り抜けると広い上がり框から長い板張りの廊下が続く。
乙姫様がお出迎えに見えられた。

むかし
とても仲の良い兄弟がいた
ウミサチヒコ
ヤマサチヒコ
兄は海で魚をすなどり、
弟は山で狩をして暮らした。

ある日
弟は兄の漁を見て
大変興味を覚えた。
「兄じゃ。
一度俺にも釣りをさせてくれ。」
すると兄は、
「ふふ〜ん
それだけはいやだね。」
断られると何故か気に成るらしい。
「一度で良い。
その釣り針を貸してくれ。」
あまりにも執拗な弟に、
兄も
「まあ、よかろう。」
大事な釣り針を兄は貸してしまった。
弟は大喜びで、
「明日は大漁だ。」
すると兄は不機嫌そうに
「釣りはそう甘いものじゃない。」



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